Summary

田中 愛治 氏
早稲田大学政治経済学術院教授,
早稲田大学グローバルエデュケーション センター所長, 次期総長

Science / AAASJapan & Science / AAAS:
For the Future of Science and Innovation in Japan

研究者育成のためのシステマティックな教育

今集会の最後の講演者は、早稲田大学の政治経済学術院教授で次期総長でもある田中愛治教授で、「どうすれば有能な研究者や教育者を育成できるのか?:研究大学に期待される役割、早稲田大学の場合(How can we foster capable researchers and educators?: Expected roles of a research university, the case of Waseda University)」と題して講演を行った。教授は、研究分野における若い世代を育成するための戦略を、自身の日本および米国における経験に基づいて提案した。教授は講演の冒頭で、1930年代に米国のトップ大学における例にならって「輝かしい世界レベルの大学になるという決意が必要である」と述べた。当時、米国の大学は教育および研究の質に関して欧州に大きく後れを取っていた。そこで、欧州の大学に追いつくために、3つの目標から成る戦略を練り、1970年代までにその目標を達成した。第一の目標は、「大学教員の質を高める」というものであった。田中教授によれば、このための強化策として3つの方法、すなわち国際的な教員募集、海外からのPh.Dを有する若手研究者の招聘、そしてテニュアトラック・システムの導入という方法を採用が挙げられる。実際の例として、ハーバード大学は、世界のトップレベルの教員を集めるという目標を明確にし、大学の基礎に据えるという取り組みを行った。第二の目標は、「研究の質を高める」というものであった。米国の大学は、この目標のために学会の機能を高め、論文刊行のシステムを構築した。そして第3の目標は、「教育の質を高める」ことであった。優れた教育は有能な学生を生み出し、そうした学生は優れた研究者の候補であり、研究に寄与することになるであろう。教育の質を高めるための方法には、コース・ナンバリング制度の導入、シラバスの開発、「オフィス・アワー」の導入、学生による授業評価、アカデミック・ライティング教育、そしてテニュア・トラック制度の活用などがある。

こうしたアイデアに基づいて、田中教授は教務部長・教務担当理事として新しい教育システムを早稲田大学に導入した。こうして、2007年から基礎的な学術研究スキルを高める一連の講座を開設し、例えば日本語と英語のためのライティング・センター、新入生のための日本語のアカデミック・ライティング科目、Math and Stat Center、および英語におけるアカデミック・ライティング科目などがその例である。さらに、新しいシステムとして、学生による授業・講義内容の評価、テニュア・トラック制度、国際的な教員募集、クォーター・システム(4学期制)、コース・ナンバリング制などが次々と導入した。

田中教授は講演の締めくくりとして教育の重要性を改めて強調し、「若い学生を体系的に教育すること」および「研究ならびに教育に優れた、良質で強力な教員の獲得」が、研究を推進して将来に生き残る大学になるための鍵になると指摘した。

ページの先頭へ