AI翻訳を使いこなすテクニック

AI翻訳のメリットとデメリット

AI翻訳のメリットは、即座に翻訳文を出力できることです。翻訳処理をするときにはシステムの内部で複雑な演算処理を行っていますが、近年のコンピュータのハード面での進歩によって高速な処理が可能になっています。人間が行えば非常に時間がかかる翻訳作業も、AI翻訳はほとんど時間をかけることなく実行できるため、翻訳にかける時間を短縮できることが期待できます。

一方で、AI翻訳のデメリットは、エラーのない完全な翻訳を提供することは困難であるということです。機械翻訳はAIを導入することで進歩してきましたが、AIならではの間違いも存在し、誤りをなくすまでには至っていません。人間の言語自体が複雑で、また状況に依存するものであるため、今後も完全な翻訳機ができることはないのかもしれません。すなわち、AI翻訳はミスがあるものとして、そのリスクを織り込んだ上で運用する必要があります。

AI翻訳のコストとセキュリティ

AI翻訳はウェブサービスとして利用できるものも多く、その中には無償で翻訳できるサービスもあります。それらを使っている限りは費用は掛かりませんが、ニーズによりコストは変わってきます。すなわち、翻訳精度を高めるためカスタマイズしたい、自社内サーバーで運用したい、人間による編集作業(ポストエディット)を行いたい、などどのような運用を目指すかでコストは変わってきます。

また、セキュリティ面にも考慮する必要があります。AI翻訳サービスの中には、入力した文章をAIの学習などに再利用する旨が記載されているものもあります。企業の秘密情報を翻訳する場合、こうした再利用を認めてもよいか企業内でコンセンサスを取っておく必要があるでしょう。そしてもし再利用が認められないなら、「翻訳したテキストが破棄される」ことを明示したAI翻訳に移行することになりますが、多くの場合こうしたサービスは有料となっています。

ポストエディット

「AIの翻訳と人間の翻訳」でも述べたように、AI翻訳は100%正しい翻訳を保証することはできません。また、意味的には誤りではなくても、語彙が間違っていたり、文体がおかしかったりすることもしょっちゅうです。かつての自動翻訳のようにあたかも機械が訳したようなぎこちない翻訳文を出力することは減りましたが、完璧な翻訳機となるにはまだ時間がかかりそうです。自分が読んで理解するだけであれば、多少翻訳に間違いがあっても自分がそれに気づいていれば大した問題はありませんが、それをまた他人に伝えるとなると話は別です。

AI翻訳を正しい翻訳として使うには、翻訳の結果をチェックし、誤った箇所を修正するという作業が不可欠になります。これをポストエディット(post-editing)と呼びます。ポストエディットは、翻訳前の原文もみながら、原文と翻訳文が正しく一致しているかを確認し、誤りや不自然な表現があれば適切な言葉に修正していきます。AI翻訳は部分的に訳を飛ばしてしまっていることもある(訳抜け)ので、その場合は自分で翻訳するか、AI翻訳にかけなおすかして抜けた箇所を埋めます。逆に原文にないのに翻訳文に現れてしまっていることもあり(湧き出し)、その部分は削除します。

ポストエディットを行うには原文を読める言語スキルが求められ、さらに翻訳文のクオリティを上げようとすると作業量や必要な知識が多くなります。このため、自力でやることが困難な場合も多く、そのようなときは翻訳を専門としている翻訳会社に外注することもできます。翻訳会社は自前でAI翻訳システムを保有していることもあるので、適切な翻訳エンジンの選定から対応してくれることもあります。

プリエディット

AI翻訳を使って日本語を外国語にうまく訳せないとき、次のような問題に当てはまっていませんか?

  • 文章が長すぎる
  • 主語や目的語などが省略されている
  • 日本独自の単位などが使われている
  • 業界用語や流行語など使用頻度の低い語が含まれている

これらの要素はAI翻訳にとっては苦手なものであり、訳がおかしくなる原因となります。そういうときは、事前に原文に手を入れてからAI翻訳にかけるとうまくいくでしょう。
例えば、

  • 長すぎる文を2つに分ける
  • 主語や目的語を補う
  • 尺→メートル、和暦→西暦などに変換する
  • より平易で普遍的な表現に置き換える

これらの処理を、プリエディット(pre-editing)と呼びます。例に挙げたように、翻訳しにくい要素を編集で手直しすることを指していますが、普段からわかりやすい表現、外国の人にも伝わりやすい表現で書くことを心がけていれば、プリエディットをする必要はないかもしれませんね。

連載AI翻訳を解き明かす

AI翻訳はどうやって翻訳しているのか?何ができて何ができないのか?AI翻訳の背景技術や仕組みをふまえて解説します。

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AI翻訳と翻訳プロセス

訳というサービスの中で、いわゆるテキストを変換する作業は、実はこの複雑なサービスの中のひとつのプロセスに過ぎません。私たちの翻訳サービスでは、資料の読み込みなどの前準備、用語や表現などのカスタマイズ、品質管理工程、数値などのテクニカルチェック、ドキュメントレイアウトの編集なども含めた一連のワークフローに基づき、高品質な翻訳成果物を提供しています。この考えはAI翻訳を用いた場合も変わりません。AI翻訳の恩恵を最大限享受するために、効率化や品質の安定化を図り最適化されたプロセスをご提案していきます。

AI翻訳を用いたコストとスピードの最適化

AI翻訳はただ使うだけでは品質の安定化を望めず、ただポストエディットするだけではコストもスピードも大して改善できません。つまりAI翻訳を導入するだけでお客様のニーズに十全にお答えすることはかなわないと考えています。
コストが大事なのか、スピードアップが必須なのか、その両方を目指したいのか。私たちはニーズをきめ細やかに聞き取り、ただそれをできると請け負うのではなく、根拠に基づいたメソッドとストラテジーを提案し、ニーズの充足を目指していきます。

人手翻訳とのインテグレーション

AIは人間にとって万能な技術ではなく、それはAI翻訳も例外ではありません。エラーの制御、表現や語彙のカスタマイズなど、AI翻訳を適切に利用するには人間側でも知識やノウハウに基づいてAIをサポートしていく必要があります。ポストエディットもAIと人間の協調の一例と言ってよいでしょう。また、あるときはあえてAI翻訳は使わず人手翻訳するほうが生産性の高い選択肢となるかもしれません。
私たちは、AIの柔軟性と人間の経験を統合(インテグレーション)することで、よりスピーティで、よりコストパフォーマンスに優れ、よりクオリティの高いサービスを提供する、Total Solution Providerとして医薬品開発や医学研究をサポートしていきます。