2025.10.08
スウェーデンのカロリンスカ研究所は6日、2025年のノーベル生理学・医学賞を大阪大学の坂口志文特任教授、米システム生物学研究所のメアリー・E・ブランコウ氏、米ソノマ・バイオセラピューティクスのフレッド・ラムズデル氏に授与すると発表。自宅に帰る途中でニュースを知り、心から嬉しく、インタビューをTVで聴きながらいまだワクワクする。
免疫反応を抑えるブレーキ役となる「制御性T細胞」を発見されたことが功績である。
日本の研究予算の削減、科学力の低下、を嘆く声が大きい中、日本の科学の底力、やっぱりすごいかも、と思ってしまうのは私だけではないはずだ。
先生は以前Scienceのボードメンバーで、当時在籍されていた京都大学にScienceのEditorを連れて行ったことがある。研究の中身は全く分からなかったが、熱い思いと、Scienceからの絶大なる期待と信用を感じることでできた。
Science Japan Officeの活動の一つに「サイエンス誌に載った日本人研究者」シリーズ*の企画と制作がある。2008年、その第一号に先生の記事を取り上げさせていただいた。
2007年8月3日号「Emerging Challenges in Regulatory T Cell Function and Biology(制御性T細胞の機能と生物学に関する新たな挑戦)」というタイトルで、制御性T細胞は、自己免疫病、アレルギーなどの免疫病を抑制する、という内容だ。お忙しいだろうに、快くお引き受けいただき、嬉しかったのをよく覚えている。
PDFで確認いただけるのでここに紹介したい。
https://www.asca-co.com/wp-content/themes/asca/assets/img/science/pdf/Science_2007.pdf
2014年12月19日号のReportには「Detection of self-reactive CD8+( T cells with an anergic phenotype in healthy Individuals) 健康人におけるアネルギー形質を示す自己反応性CD8陽性T細胞の同定)のReportを、当時、大阪大学 免疫学フロンティア研究センター 実験免疫学 准教授でいらした西川博嘉先生と一緒に発表されている。
PDFによる記事:https://www.asca-co.com/wp-content/themes/asca/assets/img/science/pdf/Science_2014.pdf
2014年10月17日のReportにも、「Detection of T cell responses to a ubiquitous cellular protein in autoimmune disease(自己免疫疾患における遍在性細胞タンパク質に対するT細胞応答の検出)」というタイトルで、当時、京都大学再生医科学研究所 生体機能調節学分野 助教の伊藤能永先生と発表。
PDFによる記事:https://www.asca-co.com/wp-content/themes/asca/assets/img/science/pdf/Science_2014.pdf
その他にも、数多く、また、姉妹紙であるScience SignalingやScience Immunologyにも数多く先生の論文が掲載されている。
「サイエンス誌に載った日本人研究者」シリーズ*は、現在、Signaling、Science Translational Medicine (STM)なども加わり、毎年の日本人研究者の活躍を紹介している。
PDFを以下でご覧いただくことができるし、希望者には冊子もお送りしている(数に制限あり)。
*株式会社コスモ・バイオ様に協賛いただいています。
https://www.asca-co.com/service/japanese_scientists/
初めてこの先生のお名前をお伺いした時、「志文」というお名前がとってもかっこいい、と心象的だった。あの時代にこうしたネーミングは少なかったと思うが、お父様が西洋哲学に造詣が深く、そのゆえんらしいと聞いて納得。先生のインタビューの中でも、免疫研究は哲学に似ている、と何度かおっしゃっている。自説が他の研究者たちに認められない「冬の時代」も長く、辛抱強く努力を続けられたからこそである。奥様のお力、とおっしゃっているが、奥様を魅了させた先生の存在が大きい。一つの研究を発展させるには長く、厳しい経験の積み上げだ。改めて、研究は、深い。
10月14日(火)14時から第51回 Science Caféを開催。今回のタイトルは「数理科学で読み解く感染症の臨床データ」、名古屋大学の岩見真吾先生に登壇いただく。日本・アメリカ・コンゴ民主共和国による国際共同研究の結果である。是非登録して参加していただきたい。
参加登録:https://www.asca-co.com/science/%e7%ac%ac51%e5%9b%9e-science-cafe/
Science Japan Officeでは「Science Pick Up」という新しいコンテンツ配信を開始。興味深い論文を紹介したりしているので、ぜひ読んでみてほしい。
Science Pick Up :https://www.asca-co.com/science/%e6%96%b0%e3%82%b3%e3%83%b3%e3%83%86%e3%83%b3%e3%83%84%ef%bc%81science-pickup%ef%bc%9ascience%e8%aa%8c%e3%81%8b%e3%82%89%e8%88%88%e5%91%b3%e6%b7%b1%e3%81%84%e8%a8%98%e4%ba%8b%e3%82%92%e3%81%94/