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  • 2021.06.11
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科学は人間ドラマ:Science新編集長の取材記事が掲載

毎日新聞 6月10日号に「コロナ下の科学、歴史的速さで進展」と題し、Science編集長Holden Thorpの記事が取り上げらえた。

COVID-19の大流行の中、米国などではワクチン接種が進み、元の生活を取り戻しつつあるが、ワクチン開発や、コロナ下で見えた科学と社会を巡る問題について、Scienceの編集長がどう見ているのか、というとても興味深い内容である。

ヒト細胞への感染に必要な「スパイクたんぱく質」の構造に関する世界初の論文が2020年2月19日にScienceで発表された。ウイルスを攻撃する抗体を作るスパイクたんぱく質の構造や機能が分かったことで、ワクチン開発が可能となった、と記事は始まる。

編集部への論文提出のわずか9日後に掲載され、世界保健機関(WHO)がパンデミックを宣言するより3週間も前だった。「科学者たちは、ロックダウン(都市封鎖)など人々の生活を変えるようなことが起きるよりずっと前から、この仕事に取り組んでいたということを知ってほしい。私たちも、たんぱく質の構造を公表することは緊急の課題だと思い、やれることは全てやった」と続く。

今回のワクチン開発に、長く研究されてきた技術が生かされた。編集長は、mRNAワクチンの開発者は約20年間、この研究をしていたが、あまり注目を浴びることはなかった、この瞬間のために準備がなされていた。私たちが思っていた以上の技術だった、と称えた、と。

その傍ら、科学と社会の関わりを巡る問題が顕在化され、パンデミックの中で科学コミュニティーは強化された。こんなに速く正確に科学が進んだのは歴史上初めてだと話したのだという。科学への信頼は高くないという恐るべきこともわかった、と。科学がどのように人々の命や経済活動を守るかというメッセージが伝わらなかった、と振り返ったのだという。

トランプ前米大統領などが科学を軽視してきたことにも苦言を呈し、科学者もソーシャルメディアで議論に参加すべきだと考えると編集長は述べた、とも。

科学とは、実験を繰り返すことで真実を見つけるプロセスであり、結果によって知見が変わることは自然なことである。科学は空から降ってくる大きな古い本ではなく、人間ドラマである、と記事がまとめられている。この内容は、第2回Science Japan Meetingでも報告された部分もあるが、この記事は分かりやすく。メッセージ性が高く、取材の技の高さが伝わってくる。記事にしていただいた信田真由美様には心から感謝を申し上げたい。

ここからぜひ記事の全文を読んでもらいたい。

https://mainichi.jp/articles/20210610/ddm/016/040/012000c

第2回Science Japan Meetingの会議録はこちらから
https://www.asca-co.com/blog/science/entry20210525191431.html

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