2025.10.22
今回はScience 2025年10月9日号 News Featureより『Seeking ghosts:Botanist Kenji Suetsugu is revealing the secrets of plants that have given up photosynthesis(幽霊を探して:植物学者 末次健司氏が解き明かす光合成をやめた植物たちの秘密)』、ScienceライターのDennis Normile氏によるNews Featureの記事を紹介します。
末次健司氏は神戸大学の植物学者であり、菌従属栄養植物(mycoheterotrophs)研究の世界的権威です。菌従属栄養植物とは、光合成をおこなわず、地中の菌類と根を絡ませ、菌類が木々から得た炭素を栄養として生きているという不思議な生態をもった植物であり、進化的観点からも注目されています。
記事では、末次氏の幼いころの植物との出会いから研究に至るまでの道のり、最新の研究活動や報告についてフィールドワーク取材や写真も交えてとても丁寧に解説されています。
日本の古都・奈良にある春日山原始林。4〜5歳の頃、末次健司氏は両親とこの森を散歩していたとき、まるで乳白色のガラス細工のような、透き通った白い茎と花を持つ不思議な植物を見つけました。それが「ギンリョウソウ(Monotropastrum humile)」、いわゆる「幽霊植物」との出会いだったと書かれています。
「こんな神秘的な生き物が存在することに感動しました」と末次氏は語っています。記事ではこの白と青の神秘的で美しいギンリョウソウの写真が紹介されているほか、
2022年に20年という長きに渡る調査の末に発見された新種のモノトロパストルム・キリシメンセ(Monotropastrum kirishimense)、日本各地で発見された数々の貴重な菌従属栄養植物、また植物の種子散布者とし特定された昆虫の驚くべき生態なども紹介されています。
さらに興味深い点として、末次氏や研究室のメンバー、フィールドワークの協力者であるアマチュア植物愛好家の活動場所として、研究室の位置する神戸六甲山山系や大阪南部の国定公園、末次氏が植物研究を志すきっかけとなった奈良県の原生林など人々の生活圏からさほど遠くない場所がいくつも含まれているということ。身近なとこにあるまだ知られていない世界を注意深く観察することが、新たな発見につながっているように感じられます。
「30年以上経っても、あの幽霊のような植物に出会ったときの感動は消えていません」と末次氏は語っています。末次氏の研究に対する眼差しや情熱は多くの人々に感動を与えてくれます。何でもない日常の中にワクワクするような発見することが、人生を刺激的にも、豊かにもしてくれるのかもしれません。つい目先の出来事ばかりにとらわれがちな毎日ですが、小さな発見を楽しめるような心を持ち続けたいと思います。
(執筆:松田裕子)
原著はこちら:Seeking ghosts:Botanist Kenji Suetsugu is revealing the secrets of plants that have given up photosynthesis
※本記事で引用されている翻訳は機械翻訳をもとに作成しています。正確な内容は原文をご確認ください。
※記事の内容は筆者の解釈に基づいており、AAAS/Scienceまたはライターの公式見解を示すものではありません。
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