北川進先生が今年のノーベル賞化学賞を受賞

2025.10.09

  • コラム

スウェーデン王立科学アカデミーは10月8日、2024年のノーベル化学賞を京都大学高等研究院特別教授で同理事・副学長の北川進氏、米カリフォルニア大バークレー校のオマー・ヤギー氏、豪メルボルン大のリチャード・ロブソン氏に授与すると発表した。授賞理由は、「多孔性配位高分子(MOF:Metal-Organic Frameworks)を世界で初めて合成し、「配位空間の化学」という新たな研究領域を創成されたという先駆的な研究に対してである。

北川進先生といえば、今年3月10日に開催された「Science Japan Meeting 2025」でご挨拶いただく予定だったことが、まだ記憶に新しい。このイベントは米国科学振興協会(AAAS)が主催し、京都大学が共催したものである。残念ながら北川先生はご都合により参加できなくなったが、会議のテーマであった「日本の科学力の強化」は、まさに北川先生が長年にわたって体現されてきた取り組みそのものである。 https://www.asca-co.com/service/sjm2025/

Science Japan Officeが編集に携わっている、『サイエンス誌に載った日本人研究者』シリーズ でも北川先生とは何度か原稿のやり取りをさせていただいた。

2013年のScience誌に掲載された「Shape-Memory Nanopores Induced in Coordination Frameworks by Crystal Downsizing(結晶サイズの縮小化によって錯体フレームワーク内に現れる形状記憶ナノ細孔)」という論文もこのシリーズに掲載されている。京都大学 物質-細胞統合システム拠点(WPI-iCeMS)准教授(論文掲載当時)古川修平先生らが共同著者である。研究室の紹介で北川先生は開発された多孔性材料は、地球環境・エネルギー問題、さらには細胞生物学へとさまざまな分野での応用に期待がもてると述べられており、まさに今回の研究テーマの先駆けとなったという印象を受ける。
https://www.asca-co.com/wp-content/themes/asca/assets/img/science/pdf/Science_2013.pdf

続いて、2014年のScience誌には「Self-accelerating CO sorption in a soft nanoporous crystal(ソフトなナノ細孔性結晶における一酸化炭素の自己加速的吸着)」というタイトルで京都大学 物質-細胞統合システム拠点(WPI-iCeMS)特定准教授(論文掲載当時)松田亮太郎先生らとの論文が掲載されている。
https://www.asca-co.com/wp-content/themes/asca/assets/img/science/pdf/Science_2014.pdf

また、2019年のScience誌には「Design and control of gas diffusion process in a nanoporous soft crystal(ナノポーラスソフトクリスタルにおけるガス拡散プロセスの設計と制御)」というタイトルで京都大学 高等研究院 物質-細胞統合システム拠点 客員講師(論文掲載当時)細野暢彦先生らとの論文を掲載されており、こちらも同日本人研究者冊子でも紹介させていただいた。北川先生は、多孔性材料の新たな機能設計指針を与えるものであるとコメントを添えられている。材料化学を基礎に地球規模での課題解決に向けて取り組まれる先生方の熱意が伺える。
https://www.asca-co.com/wp-content/themes/asca/assets/img/science/pdf/Science_2019.pdf

ノーベル賞受賞後の記者会見で北川先生は、新しいことにチャレンジする姿勢を常に科学者として大切にしてきたこと語っている。日本の科学力の低下が叫ばれる今、若手研究者の流出、研究論文数の低下など、悲観的なニュースが多い中で、こうした成果はまさに希望であり光である。


「サイエンス誌に載った日本人研究者」シリーズは、現在Science誌とその姉妹紙であるScience Signaling、Science Translational Medicine (STM)、Science Immunologyなども加わり、毎年の日本人研究者の活躍を紹介している。PDFを以下でご覧いただくことができるうえ、希望者には冊子もお送りしている(数に制限あり)。
株式会社コスモ・バイオ様に協賛いただいています。
https://www.asca-co.com/service/japanese_scientists/

Science Japan Officeでは10月14日(火)14時から第51回 Science Caféを開催。
今回のタイトルは「数理科学で読み解く感染症の臨床データ」、名古屋大学の岩見真吾先生に登壇いただく。日本・アメリカ・コンゴ民主共和国による国際共同研究の結果である。是非登録して参加していただきたい。
参加登録:
https://www.asca-co.com/science/%e7%ac%ac51%e5%9b%9e-science-cafe/

Science Japan Officeでは「Science Pick Up」という新しいコンテンツ配信を開始。興味深い論文を紹介しているので、ぜひ読んでみてほしい。
Science Pick Up:https://www.asca-co.com/science/%e6%96%b0%e3%82%b3%e3%83%b3%e3%83%86%e3%83%b3%e3%83%84%ef%bc%81science-pickup%ef%bc%9ascience%e8%aa%8c%e3%81%8b%e3%82%89%e8%88%88%e5%91%b3%e6%b7%b1%e3%81%84%e8%a8%98%e4%ba%8b%e3%82%92%e3%81%94/

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