コラム

  • 2018.11.14
  • コラム

わかりやすく

先月2018年10月、翻訳連盟の年に一度のお祭り、翻訳祭が京都で2日間にわたって行われました。そこでの講演の第一弾が、国語辞典の編集委員の飯間浩明さんによる「わかりやすい言葉と難しい言葉」。

パワーポイントを使わず、自身で発せられる言葉だけで90分。迫力の講演でした。

わかりにくいのは、3つの理由がある。

1. 言葉のわかりにくさ
2. 文のわかりにくさ
3. 文章の組み立てのわかりにくさ

わかりにくい言葉の代表例として、役所言葉、政治家言葉を上げていらした。
「緊急事態宣言を発出しました」「全力を傾注しました」
日常語を使って、「出しました」「注ぎました」のほうが分かりやすいのに。

一方、わかりやすい文章の組み立ては、結論を先に。論文などでも、問題提起、結論、理由と進めれば誰にでもわかりやすい。

そして、それを踏まえたうえで自問されるとのこと。自分の言葉、文章は本当にわかりやすいのか。そのうえで「中学生にもわかるように書く」のだそうです。
ところがそうは思っても自分が想像する中学生像に向かって書くと、やっぱり中学生には難しすぎる。なので、「今は小学校5-6年生に向かって書いています。それぐらいでちょうど中学生にもわかるように書けているのでは」。

奇しくも同じ翻訳祭で機械翻訳の講演をしていただいたMike Dillinger氏も昨年の取材時、「アメリカ人の平均の読解力は、8年生(日本での中学生ぐらい)ぐらい。その人たちが分かるように書かなければならない」とおっしゃっていました。

9月に開催したScience Japan Meetingで講演いただいた早稲田大学の総長、田中愛治先生も、日本語であろうと、英語であろうと、やはり一文一義。伝わる文章を書く方法を学ぶ必要があると力説されました。

いずれも、どんな難解な文章もサクサクと理解してしまえるような高度な理解力の持ち主が声をそろえて、「相手に伝わるには」を熱く語られます。

伝えたければ、伝わる言葉で。

翻訳も同じ。自戒を込めて、伝わる翻訳を。

最後に余談ですが、NHKの「ためしてがってん」1000回記念のインタビューで、立川志の輔が言っていた言葉。「ハイボールを飲んで酔っ払っているお茶の間のお父さんにも理解してもらえるように」言葉や表現を工夫しているとのこと。業界は違っても、根本は同じなのですね。

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