第1回:Googleで"習わずに慣れた"

 
英語翻訳者で Google など検索サイトのお世話にならない方は皆無でしょう。今回は、その利用効率が上がる方法をお教えします。

医学英語がうまくなる、つまり、native に近くなるには語の組合せが native なものであるか確認し記憶していく必要があります。
会話がうまくなりたいと思い、映画館に終日篭って繰り返し、繰り返し同じ表現とシチュエーションを覚えた方も多いでしょう。検索サイトの利用もそれに似たようなものです。つまり、検索サイトを使い表現の有無を確認するだけではなく、繰り返し同じ表現とシチュエーションを読み取ることにより医学英語を自分のものとすることができます。

例を挙げましょう。"GCPに準拠する"、"プロトコールに適合する"といった時によく出てくる動詞に comply と conform があります。
Comply 〔要求・規則に〕応じる, 従う
Conform 〔規則・習俗に〕従う
という意味で使われますが、日本語訳が似ているために混乱することがあります。

"プロトコールを遵守した"を仮に complied with the protocol と訳したとします。その確認のため Google に「comply conform protocol」と3語を入力して見ます(検索のポイントは混同しそうな語を同時にkey word入力すること)。
15万件のヒットがありました(3 words のいずれかを含む文章)。検索結果を数ページ、ザッと読み下していきますと4ページと13ページに conform to the protocol の例が見つかり、一応使えることが分かります。

ここで重要なことは自分の訳が存在するかどうかを確認して終るのでなく、language sense を磨くため用例を分析するということです。映画館にいて繰り返し見るのと同じように Google の例を丁寧にみていきます。Google の映画館化です。そして、conform to the protocol という表現が少ないのはなぜか、conform や comply はどのような名詞と組合わされているかを確認します。

すると例文にはいくつかの表現形のあることが分ります。多い表現として、
comply
with requirements / specifications / codes / rules / law
conform to (with) Form… / experimental design / statistical procedures and practices / professional standards / existing standards
といった用法が見つかります。

そこで on-site dictionary(dictionary.com)を引いてみると、
    comply: To act in accordance with another's command, request, rule, or wish
    conform: To act in accordance with current customs or modes.
とあります。そこで、再度Googleの例を見返してみると何となくニュアンスの違いが分かってきます。

例1 agree to comply with all other requirements in 21 CFR 312. ... Export of the test article from the US must conform to FDA regulations. 
例2 the majority of clinical trials conducted in the UK already broadly conform to agreed standards and principles
例3 conform to the Good Clinical Practices (GCP)
例4 conform to the SOP describing this process

Complyとconform は日本語辞書的にはいずれも"従う"でありその差が見えにくいのですが、これらの例からするとcomplyは厳格な規則に従うニュアンス、conform は指示があるからそれに従うといったニュアンスに推測されます。
ただ単に続く名詞であるrequirements、specifications、rules、procedures、standards を比べるだけでは見えにくいものが数多くの例文を読むことにより何となくの雰囲気がつかめてくるものです。

Grammar であれば正しい、正しくないといえますが、語の組合せの場合、native の観点から一般的かそうでないかと捉える方がよいでしょう。
ニュアンスはヘンであっても意味は通じることはありえます。しかし、native English を書くとなればニュアンス的にも native なものであって欲しいものです。key words を変えつつ多くの使用例を Google に見る、それが効率的に英語を学ぶひとつの手段です。そうして覚えた word combinations を簡単に忘れることはありません。

さて、"安全性を確保する"、"秘密を保持する"によく混乱する ensure と secure はどのようにニュアンス的に違うのでしょう。

Dictionary.com を引くと、
ensure: to make sure or certain
secure: to guard from danger or risk of loss, to make certain, ensure, to protect or ensure the privacy or secrecy
となっています。ご覧のように英英辞書を引いてもその違いは分かりにくいものです。Googleに「ensure secure safety」を入力します。

例1 ensure public / patient safety (この用法が頻繁に現れ safety は ensure で確保されることが分かる。)
例2 ensure privacy
例3 secure working environment, ensure regular inspections
例4 secure the safety of transfused blood (WHO)("secure safety"はまれ。)
例5 secure access to 
例6 most secure method
例7 secure the health, safety and welfare

例として secure を多くリストしましたが数的には ensure の使用頻度が圧倒的で、secure には"ensure secure transactions"や"Records always remain secure"といった形容詞的用法が目立ちます。

こうした Google 遊びを続けると usage というものを肌で感じることができるようになります。
習うより慣れろは言語習得の基本です。数多く当たること。それ以外に方法はありません。検索サイトも繰り返せば慣れてきます。何しろその使用例が密度濃く並んでくれるのですから効率の良いことこの上ありません。
大日英辞典にあったから即使うのではなく、こうした重ね読みをして英語を学んでみて下さい。大きな大きな財産となりますから。
 

石田 匠
日本医学英語研究所代表
アスカコーポレーション顧問