株式会社アスカコーポレーション - 医薬翻訳・英文校正・メディカルライティング ・通訳

ASCA

 ~第2回~

ふーちゃんことASCAの田村房子です。サイエンス誌の英語を使って科学英語を勉強するコーナー「ふーちゃんの翻訳教室」第1回目はいかがでしたでしょうか?前回は、"time-varying"、"undergo"、 "translesion"、 "precede"を勉強しました。今回は2回目、今月のサイエンスの記事から「覚えてほしい」フレーズや用語を紹介します。
ご質問も含め、多くのご意見をおまちしています。ご意見はこちらへ

▼今月のフレーズ

1 <recapitulate this differentiation> <recapitulate certain behaviors>

It was also possible to recapitulate this differentiation in vitro by using treatment with the cytokines macrophage colony-stimulating factor and granulocyte-macrophage colony-stimulating factor. (Science 6 January 2006 311: 83)

マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)と顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)の2種のサイトカインにより、in vitroにおいても、この(前駆細胞の)分化を再現させることができた。 

<解説>
Overexpression of p11 increases 5-HT 1B receptor function in cells and recapitulates certain behaviors seen after antidepressant treatment in mice. (Science 6 January 2006 311: 77)
p11をマウスに過剰発現させると、細胞内の5-HT1B受容体の機能が増強され、抗うつ薬を投与した後に見られるある種の行動が再現した。

同じ号に異なる分野でこのように同一の単語が使われるとは驚きです。それほど、recapitulateは今が旬の単語なのでしょう。Googleでcell と一緒に検索すると、約 188,000 件あり、lung cancerの文献などが最初に出てきます。

因みに <recapitulate>は、The American Heritage Dictionary of the English Language では1. To repeat in concise form. 2. Biology To appear to repeat (the evolutionary stages of the species) during the embryonic development of the individual organism. とされているだけで、生物関連で現在よく使われている新しい意味については記載されていません。medical dictionaryにもほとんど述べられていません。しかし、大阪大学理学部の大学院入試問題にはrecapitulate再現する、と注釈してありました。

2. <potassium chloride cotransporter>

Excitation and signal propagation initiated by AACs is supported by the absence of the potassium chloride cotransporter 2 in the axon. (Science 13 January 2006 311: 233)

AACsによるニューロンの発火・興奮とシグナルの伝播は、軸索のK-Cl共輸送体2(KCC2)の欠損によって支持される。

<解説>
potassium chloride というのは塩化カリのことですが、ここではそうではなく、別々の物つまり、potassiumとchlorideのことで、この間にハイフンがあると考えた方がわかりやすいと思います。カリウムと塩化物の共輸送体のことですが、記号で表記する方が多く、わかりやすいようです。Jabion 日本語バイオポータルサイトには、次のように説明されています。K-Cl cotransporters are proteins that lower intracellular chloride concentrations below the electrochemical equilibrium potential.

化学名を訳すのは難しく、例えば、腎臓機能検査でcalcium-phosphate productという用語があるのですが、これは通常カルシウム・リン積(Ca×P)といいます。
血中のカルシウムイオン濃度(通称、カルシウム濃度)とリン酸イオン濃度(通称、リン濃度)の積のことです。
ところでchloride ionは塩化物イオン(平成4年の中学校学習指導要領の施行以降)、塩素の陰イオン(Cl-)のこと。でも塩素イオンという言葉も別にあるのですよ。chlorine ionといい、塩素の陽イオン(Cl+)が存在するのです。
chlorine cationよりもよく使われています。陰電荷を帯びた単原子種は-ide (?化物)の語尾をもつ語によって表現する規則なのです。potassium ion はカリウムの陽イオン(K+)。カリウムの陰イオンは、potassium anionです。

3. <clinically relevant antibiotic resistance mechanisms>

Study of this reservoir could provide an early warning system for future clinically relevant antibiotic resistance mechanisms. (Science 20 January 2006 311: 374)

この貯蔵庫の研究は、将来発現すると予想される臨床的に重要な抗生物質耐性の機序を早期に警告するシステムの構築につながるであろう。

<解説>
Textの出だしは、臨床的に重要な抗生物質の由来について、次のように始まっています。
Most clinically relevant antibiotics originate from soil-dwelling actinomycetes.
Abstractでは抗生物質の耐性の機序も臨床的に重要であることを述べています。clinically relevant またはclinically significantという言葉は臨床医学系でよく見られ、臨床的に問題となる重要なこと、すなわち臨床的意義があることとされています。

因みに<relevant>はThe American Heritage Dictionary of the English Language ではHaving a bearing on or connection with the matter at hand. と説明されており、同意語はpertinent,などですが、語源的にはラテン語relevare (to relieve, raise up) 由来であり、まさに救済してほしいことに繋がりますね。

4. <has long been a goal>

The design of enzymes with new functions and properties has long been a goal in protein engineering. (Science 27 January 2006 311:535)

新しい機能と性質を持つ酵素の設計は蛋白質工学の積年の目標であった。

<解説>
積年の目標は、言い換えれば、長い間挑戦すべき的、難問であったわけです。Textの中では、... the design of enzymes with new functions remains a challenge. と言い換えてありました。「幼稚な思考と思われぬよう、同じ表現を繰り返して使わないこと」というテクニックが生きています。1つの事象に対し、観点を変えていろいろ言い換えてみましょう。語彙も増えるし、展開もおそらく増えるはず。

どうでしたか?科学なんてわからない、って方も、英語を書くという目的で読んでみてください。少しは科学英語に興味を持っていただければ幸いです。
来月も遊びに来てくださいね。田村