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ASCA

 ~第9回~

ふーちゃんこと田村房子です。気がつけば秋はすぐそこまでやってきていますね。秋といえば、食欲の秋、読書の秋、なんといっても勉学の秋です!
さて、今月も「覚えてほしい」フレーズや用語を紹介します。サイエンス誌へのご質問も含め、多くのご意見をおまちしています。ご意見はへ。

▼今月のフレーズ

1. angiogenesis とneovascularization

Netrins Promote Developmental and Therapeutic Angiogenesis
We also show that netrins accelerate neovascularization in an in vivo model of ischemia. (SCIENCE 4 August 2006; 640)

ネトリンは発生的、治療的に血管新生を促進する。
また、ネトリンはin vivoの虚血モデルで血管新生を促進することも明らかにした。

注)ネトリン:神経の軸索伸長を誘導する蛋白質

<解説>

日本語ではともに血管新生と言う言葉で表現できますが、両者の使い方は同じなのでしょうか。Medline PlusのMedical Dictionaryには、次のように説明してあります。

angiogenesis:the formation and differentiation of blood vessels

neovascularization:vascularization especially in abnormal quantity (as in some conditions of the retina) or in abnormal tissue (as a tumor)

つまり、前者は組織既存の血管からの血管形成であり(正常)、後者は特に腫瘍など異常な組織からの血管形成(異常)を指すと解すればいいですね。確かにそのように使ってあります。

ついでに、
vascularizationは、the process of becoming vascular; also : abnormal or excessive formation of blood vessels (as in the retina or on the cornea)であり、胎児発生に見られる血管幹細胞・前駆細胞からの血管発生はvasculogenesis というようです。

2. putative proteins that mediate viral virulence differences

Phylogenetic clustering inferred three clades coincident with their geographical origin and case-fatality rate; the latter implicated putative proteins that mediate viral virulence differences. (SCIENCE 11 AUGUST 2006; 807)

ゲノム塩基配列の系統学的なクラスター形成からは、その地理的起源および症例致死率と一致する3つの分岐群が存在することが推測された。致死率は、ウイルスの病原性の違いを調節すると推定される複数の蛋白質と関わっていた。

<解説>

"putative"は、Merriam Webster OnLine Dictionaryには次のように述べてあります。

1 : commonly accepted or supposed
2 : assumed to exist or to have existed

確実ではないが、たぶんそうであろうとされているものにつけてみたい形容詞ですね。
この10年間に、SCIENCE掲載論文のタイトルかアブストラクトだけでもよく(136件)使われて
います。

例えば

SLC24A5, a Putative Cation Exchanger, Affects Pigmentation in Zebrafish and Humans(SCIENCE 16 December 2005: 1782

SCNM1, a Putative RNA Splicing Factor That Modifies Disease Severity in Mice (SCIENCE 15 August 2003: 967)

Bt Toxin Resistance from Loss of a Putative Carbohydrate-Modifying Enzyme (SCIENCE 3 August 2001: 860)

3. to antagonize tumor cell growth

This finding suggests that cellular changes that lead to longevity preferentially antagonize tumor cell growth. (SCIENCE 18 AUGUST 2006; 971)

これは、長寿化をきたす細胞変化が優先的に腫瘍細胞増殖を抑制することを示している。

<解説>

"antagonize" はMedline Plus Medical Dictionaryでは次にように説明されています。
: to act in antagonism to : COUNTERACT

"counteract" の説明をみてみると、

to make ineffective or restrain or neutralize the usually ill effects of by an opposite force <vitamin K counteracts the effects of warfarin>

antagonizeは、拮抗(相対抗して互いに屈しない)作用的に働く以外に、反作用的に働いて抑える意味なのですね。実際、この論文のタイトルは、上記の結論を言い換えているだけでした。すなわち、Mutations That Increase the Life Span of C. elegans Inhibit Tumor Growth

4. with minimal penetration of mucosal surfaces

The mammalian intestine harbors complex societies of beneficial bacteria that are maintained in the lumen with minimal penetration of mucosal surfaces. (SCIENCE 25 AUGUST 2006; 1126)

哺乳動物の小腸内には有益バクテリアの複雑な社会が複数形成されていて、粘膜表面へ出来る限り侵入しないように小腸内で維持されている。

<解説>

"minimal" はご存じのように最小(限)の、という意味で、Medline PlusのMedical Dictionaryにも、次のように説明されています。

: relating to or being a minimum
: constituting the least possible with respect to size, number, degree, or certain stated conditions

minimal penetration of mucosal surfacesはminimally penetrated mucosal surfaces というわけで
す。最小限に侵入されているということは、逆に見れば、最大限に侵入されていないことになります
ね。

ところでminimal と名詞の間に形容詞が入るとminimalは副詞になるのでしょうか。それとも形容詞のままなのか。つまり、minimally invasive surgery かminimal invasive surgeryか。
これは、Google検索では前者が1,580,000件、後者が65,500件、Google Scholarでも前者が14,500件、後者が1,790件で、圧倒的に前者の勝ち。しかし、minimally inhibitory concentrationかminimal inhibitory concentrationかの勝負では、Google検索で前者が18件、後者が128,000件、と後者のKO勝ち。どのように理解したらよいのでしょう。ただ慣習に従うのみ?
?

今月の翻訳教室はいかがでしたか? 今月も8月に掲載されたScience誌を題材にして解説しています。 次回でとうとう翻訳教室も10回目。10回目には秋期テストなんて案も考えています。