株式会社アスカコーポレーション - 医薬翻訳・英文校正・メディカルライティング ・通訳

ASCA

 ~第8回~

ふーちゃんこと田村房子です。残暑がかなり厳しいですが、体調など崩されている方も多いかもしれませんね。みなさん、夏ばてしないようにお気をつけください!
さて、今月も「覚えてほしい」フレーズや用語を紹介します。サイエンス誌へのご質問も含め、多くのご意見をおまちしています。ご意見はこちらへ

▼今月のフレーズ

1. validated surrogate marker

PrPSc, the main component of the infectious agent, is also the only validated surrogate marker for the disease, and its sensitive detection is critical for minimizing the spread of the disease.(SCIENCE 7 JUNE 2006; 92))

感染性物質の主成分であるPrPScは、この疾患の唯一の代替マーカーとして、有効性が既に検証されており、その検出感度は、本疾患の蔓延を最小限にとどめる上で極めて重要である。

<解説>

validated は単に有効なとか、有効性が広く認められているという意味ではなく、validation(バリデーション)すなわちdetermination of the degree of validity of a measuring device (Merrian-Webster Online Dictionaryから)のstudyで有効性が検証されている、という意味です。

医薬品製造の場では、バリデーションは、もっと広義で使われています。GMP(Good Manufacturing Practice、万一の過誤・汚染を防ぐための製造設備基準)に準じて定めた製造システムが、品質管理法のもとで所期の目的どおり機能しているかどうかをシステマティックに検証し文書化するプロセス、をさします。

2. selective silencing /to selectively silence

Selective Silencing of Foreign DNA with Low GC Content by the H-NS Protein in Salmonella --- We found that the histone-like nucleoid structuring protein (H-NS) selectively silences horizontally acquired genes by targeting sequences with GC content lower than the resident genome. (SCIENCE 14 JUNE 2006; 236)

サルモネラ菌のH-NS蛋白によるGC含量の少ない外来DNAの選択的抑制 --- 今回われわれは、ヒストン様の核様体構成蛋白(histon-like nucleoid structuring protein: H-NS)が、本来持っているゲノムよりもGC含量の少ない配列を標的にすることで、水平移動によって獲得された遺伝子を選択的に抑制する事を発見した。

<解説>

"silencing"はMedlinePlusのMedical Dictionaryでは次のように説明されています。

: to block the genetic expression of : SUPPRESS <the gene was silenced using the technique of RNA interference>

この言葉はいつ頃から使われたのでしょう。SCIENCEをサーチしてみました。

Original Article のTitleとAbstractに限定してみると、1880年から1990年の110年間は0件、1990年から2000年の10年間に6件あり、最初に現れたのは1997年で2件、gene silencingとS phase requirement for silencing というフレーズでした。2000年から2006年現在までには、なんと68件(上記以外の意味も含む)。世の中の移り変わりを実感しますね。動詞として使われたのは、もっと遅く、2002年に、In mammals, X-inactivation silences one of two female X chromosomes. が出現しています。

3. including

Small non-coding RNAs regulalte processes essential for cell growth and development, including mRNA degradation, translational repression, and transcriptional gene silencing (TGS). (SCIENCE 21 JULY 2006; 363)

翻訳に関与しない低分子RNAは、mRNAの分解、翻訳の抑制、転写遺伝子サイレンシング(trascription gene silencing:TGS)など、細胞の増殖や発生にとって非常に重要な過程を調節する。

<解説>

"including" は、The American HeritageR Dictionary of the English Language: Fourth Edition には次のように述べてあります。

1. To take in as a part, element, or member.

2. To contain as a secondary or subordinate element.

3. To consider with or place into a group, class, or total:

この説明の後のUsage Noteに書かれている例文から、Include の使い方がよく分かります。

New England includes Connecticut and Rhode Island

New England comprises (not includes) Connecticut, Rhode Island, Massachusetts, Vermont, New Hampshire, and Maine.

Include often implies an incomplete listing. The use of comprise or consist of, however, will avoid ambiguity when a listing is meant to be exhaustive.

つまり、含まれているものがまだ他にある場合(可能性を含めて)includeを使い、他にはない場合consist of かcompriseを使う。したがって、This study included 50 patients with --- というのは、他の患者も存在することを意味しますよ。これだけの患者なら、consisted of かcomprisedを使いましょう。

4.with little evidence of chronic sun-induced damage

The majority of melanomas that occur on skin with little evidence of chronic sun-induced damage (non-CSD melanoma) have mutations in the BRAF oncogene, whereas in melanomas on skin with marked CSD (CSD melanoma) these mutations are less frequent. (SCIENCE 28 JULY 2006; 521)

黒色腫の大半は、皮膚に発生し日光による慢性的損傷はほとんど認められない非CSD黒色腫であり、BRAF癌遺伝子に変異が見られる。一方、CSDが著しい皮膚黒色腫のCSD黒色腫では、BRAF癌遺伝子変異の頻度は低い。

<解説>

evidence-based medicine (EBM)という言葉はよくご存じでしょう。科学的根拠に基づく医療のことですが、evidenceを証拠でなく根拠と訳してありますね。"evidence"は、Merriam-Webster Online Dictionaryでは、次のように説明してあります。

1.

a : an outward sign : INDICATION

b : something that furnishes proof : TESTIMONY; specifically : something legally submitted to a tribunal to ascertain the truth of a matter.

2 : one who bears witness

エビデンスがある、ない、と記述されることもありますが、それはエビデンスのレベルが明確にされている場合で、普通は、エビデンスというカタカナよりも従来通りに、

「no evidence of ---」 は、「...という徴候/所見がない」、「...は明らかに認められない」。

「little evidence of ---」は、「...という徴候/所見がほとんどない」、「...はほとんど認められない」でいいようです。

今月の翻訳教室はいかがでしたか? Science8月11号の表紙は、久々に写真ではなく絵の表紙でした。Science記事もかなり興味深い内容が多いですが、表紙も毎週様々なテーマで掲載されていますよ。

来月もお楽しみに!