コメントアーカイブ

Nuclear Medicine UPDATE”の文献に関するコメントをご紹介します。



2007/5/11 更新分

画像診断にベイズ推定を活用する
核医学文献情報研究会 総監修 千田 道雄
先端医療センター 分子イメージング研究グループ

  別に難しいことではない。診断医は転移を疑うような画像所見をみたとき、依頼書やカルテを読んで、「この癌はここへ転移することがよくあるからこれは転移の可能性が高い」とか、「この癌はここへ転移することはまれだからたぶん違うだろう」と無意識に判断して、読影レポートを書く。これを定量的に行う方法をベイズ推定という。たとえば、この転移の画像診断精度が感度90%、特異度80%とすると、簡単な計算により、もし原疾患のその部位に転移する確率(検査前確率)が50%なら陽性適中率(検査後確率)は82%にもなるが、もし検査前確率が1%なら陽性適中率はわずか4%にすぎない。Gouldらの論文(*1)は、孤立性肺結節のFDG-PETによる良悪判定にこの考え方を使ったものである。予め被験者のリスク因子や結節の形態的性状によって悪性である確率(検査前確率)を調べておけば、それを利用することによって、FDG-PETの所見からより適切な診療方針を決めることができる。当然のことながら、ベイズ推定においては検査前確率をいかに精度良く求めておくかが重要で、不正確な検査前確率に基づいて推定すると、とんでもない誤りをおかすことになる。依頼書やカルテの記述を信用しすぎると、それがまちがっていたときに誤った読影につながるのと同じである。(何のために画像検査をしたのかわからなくなる。 ) 

(*1)
孤立性肺結節を有する患者における肺癌の検査前確率を推定するための臨床モデル
A clinical model to estimate the pretest probability of lung cancer in patients with solitary pulmonary nodules
Chest 2007 Feb;131(2):383-8
MK. Gould, L. Ananth, PG. Barnett, Veterans Affairs SNAP Cooperative
Veterans Affairs Palo Alto Htlh Care Syst, USA

 

多施設前向き研究で核医学の地位向上を
核医学文献情報研究会 総監修 千田 道雄
先端医療センター 分子イメージング研究グループ

 近年、多施設共通のプロトコールに基づいて前向き(prospective)に患者を追跡することによって診断方法や治療方法の有効性を実証する臨床研究がさかんに行われるようになった。これらにはINSPIRE(*1)(*2)とかBRAVE-2(*3)などのコードネームがつけられ、結果が論文に発表されて本研究会で取り上げる機会も増えた。通常この種の研究では、専門家による委員会で詳細なプロトコールを作成し、それにもとづいて対象被験者を厳密に選択し、定められたとおりに検査と治療を行い、定められた方法で効果や予後が評価される。データの管理も研究機関から独立したデータセンターで行われる。新薬の治験では以前からこれに似た厳密な臨床試験が行われてきたが、近年は医師が行う臨床研究もこのような形をとるものが多くなってきた。その背景には、EBM(evidence-based medicine)意識の高まりによってエビデンスレベルの高い臨床データが求められるようになったことがあり、実際このような多施設前向き研究は一般に客観性、普遍性、信頼性が高いとされている。  

核医学はデータの機種・測定方法依存性が強いという特徴があり、このような多施設研究に乗せるには注意が必要である。また前向きといっても、核医学データの収集方法は事前に定めるが、解析は後解析になることもしばしばである。しかし、これら多施設前向き臨床研究において、核医学検査が対象被験者の決定や治療効果の評価に用いられるようになってきたのは、きわめて喜ばしいことで、核医学関係者として大いに誇りに思う。というのは、研究が成功して、核医学検査が治療方針の決定や予後予測、治療効果判定に真に有効であることが実証されれば、当該疾患の診療ガイドラインに組み入れられて必須の検査として実施されるようになるからである。

(*1)
孤立性肺結節を有する患者における肺癌の検査前確率を推定するための臨床モデル

A clinical model to estimate the pretest probability of lung cancer in patients with solitary pulmonary nodules
Chest 2007 Feb;131(2):383-8
MK. Gould, L. Ananth, PG. Barnett, Veterans Affairs SNAP Cooperative
Veterans Affairs Palo Alto Htlh Care Syst, USA

(*2)
高リスクだが安定した急性心筋梗塞生存者においてシンチグラフィにより検出された虚血の改善に関して、初期戦略としての集中的な薬物治療と冠血行再建術は同等である。

An initial strategy of intensive medical therapy is comparable to that of coronary revascularization for suppression of scintigraphic ischemia in high-risk but stable survivors of acute myocardial infarction
J Am Coll Cardiol 2006 Dec 19;48(12):2458-67
JJ. Mahmarian, HA. Dakik, NG. Filipchuk, LJ. Shaw, SS. Iskander, TD. Ruddy, F. Keng, MJ. Henzlova, A. Allam, LA. Moye, CM. Pratt
Dept Cardiol, Methodist Hosp, USA

(*3)
発症後12時間以上経過した急性心筋梗塞患者における機械的再灌流療法の心筋救済能力

Ability of mechanical reperfusion to salvage myocardium in patients with acute myocardial infarction presenting beyond 12 hours after onset of symptoms
Am Heart J 2006 Dec;152(6):1133-9
G. Parodi, G. Ndrepepa, A. Kastrati, A. Conti, J. Mehilli, R. Sciagra, M. Schwaiger, D. Antoniucci, A. Schomig
Div Cardiol, Careggi Hosp, Italy

 

2007/1/9 更新分

新年のごあいさつ

みなさま、新年おめでとうございます。本研究会が発足してまもなく1年、試行期間を含めると2年あまりが経過し、この間作成した日本語抄録は469本になりました

最近はEBM(evidence based medicine)ばやりで、どこへ行っても「エビデンスは あるか?」「エビデンスを出せ」と言われる時代になりました。同時にITの進歩に よって、キーワードを入れれば簡単に文献が検索でき、しかもアブストラクトはた いてい無料で、それが「エビデンス」として使われる例も見かけます。しかし、ふだん文献を読んでいて感じるのは、いわゆる一流雑誌とされるジャーナルでもかな りいい加減な研究や不適切な考察が掲載されていることがまれではありません。 (査読がどのようにされているかを想像すれば、無理もないことです。人のことは 言えませんが)。またアブストラクトにいたっては、字数制限があるとはいえ、まとめ方が不適切なものが多く、記載内容が本文と食い違っているものすらあります。このような状況のなかで核医学を健全に発展させるために、論文発表された研究内容を正しく、ときに批判も交えて、日本の読者に伝えることの重要性を痛感し ています。今後も、EBM時代に対応する核医学の文献センターをめざして活動を続 けたいと考えていますので、ひきつづきみなさまのご支援をよろしくお願いします。

 

2006/11/10 更新分

PET/CTのCTの意義
核医学文献情報研究会 総監修 千田 道雄
先端医療センター 分子イメージング研究グループ

PET/CTの読影は、PETで光っている病変をCTで確認するだけでなく、CTそのものも一通り見なければならないので大変である。
また、PET/CTのCTは造影せず線量も下げて撮るので、診断的情報はあまり得られないだろうとも考えられる。しかしながら、Bruzziの論文によれば、肺癌患者を対象とするFDG PET/CT検査例の82% においてCTでのみ指摘できる所見があり、精査や対応を要するものも多かったとのことである。とくに胸部以外に思わぬ転移や合併症が見つかった例もあり、低線量単純CTも侮れない。

一体型PET/CTにおける18F-FDG集積を示さない偶発的所見
Incidental findings on integrated PET/CT that do not accumulate 18F-FDG
AJR Am J Roentgenol 2006 Oct;187(4):1116-23
JF. Bruzzi, MT. Truong, EM. Marom, O. Mawlawi, DA. Podoloff, HA. Macapinlac, RF. Munden
Dept Thorac Imag, MD Anderson Canc Ctr, USA


2006/10/27 更新分

PETを放射線治療計画に使う難しさ
核医学文献情報研究会 総監修 千田 道雄
先端医療センター 分子イメージング研究グループ

放射線治療計画にPET画像の情報を活かす試みは以前から行われていて、最近はこの2編の論文のように複雑な方法を使うやりかたも提案されている。その結果、PETを使わない場合と比べて標的体積がどう変わったという報告はかなり見られるようになったが、そのように治療計画を変更した結果治療効果がどうだったという報告は皆無である。当然といえば当然だが、治療に対して比較対照研究をデザインするのは倫理的にも難しいし、有意差がでるだけの症例数をしかも長期追跡するのはさらに難しい。しかし、治療効果が向上することを実証できないまでも、少なくとも示唆するデータを工夫して出さないと、有効性のエビデンスにはならない。

放射線治療計画における標的体積を自動決定するための18F-FDG PET画像の評価
Assessment of 18F PET signals for automatic target volume definition in radiotherapy treatment planning
Radiother Oncol 2006 Jul;80(1):43-50
JB. Davis, B. Reiner, M. Huser, C. Burger, G. Szekely, IF. Ciernik
Univ Zurich Hosp, Switzerland

食道扁平上皮癌における血管内皮成長因子の発現と微小血管密度の予後における重要性:PETとの比較
Prognostic significance of vascular endothelial growth factor expression and microvessel density in esophageal squamous cell carcinoma: Comparison with positron emission tomography
Ann Surg Oncol 2006 Aug;13(8):1054-62

JY. Choi, KT. Jang, YM. Shim, K. Kim, G. Ahn, KH. Lee, Y. Choi, YS. Choe, BT. Kim
Sch Med, Sung Kyun Kwan Univ, South Korea

事務局:
代表:石岡映子
担当:松田裕子
住所:大阪市中央区平野町1-8-13株式会社アスカコーポレーション内
TEL:06-6202-6272 FAX:06-6202-6271
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