株式会社アスカコーポレーション - 医薬翻訳・英文校正・メディカルライティング ・通訳

ASCA

 第28回 肝臓や消化管のイメージング

 

それほど頻度は多くありませんが、唾液腺(だえきせん)、肝臓、消化管など消化器系のシンチグラフィー(ときにSPECT検査)が、下の表にあげた放射性医薬品を用いて行われています。なお、この分野ではPETはほとんど用いられません。

Mr-PET_no28.JPG

 

(1)唾液腺のイメージング

99mTcO4-(過テクネシウム酸)はCl-(塩素イオン)と似た性質があり、唾液腺が唾液を作るために血液中からCl-などを取り込む際に一緒に取り込まれます。99mTcO4-を静脈注射してガンマカメラで撮影すると、唾液腺(耳下腺と顎下腺)が画像化され、さらにレモン汁を飲ませると唾液と一緒に口腔内に分泌されます。唾液生成障害をきたす疾患では集積が低下します。また、唾液腺の腫瘍のうち、ワルチン腫瘍には99mTcO4-が周囲の正常部に比べて多く取り込まれ、一方唾液腺癌には取り込まれず欠損像となるため、鑑別に役立ちます。

 

(2)肝機能のイメージング

99mTc-GSA(ガラクトシルアルブミン)は、アシアロ糖タンパクといって、血清糖タンパクのシアル酸が除去されガラクトースという糖が表面に露出しているタンパク質を99mTcで標識したもので、肝細胞の表面の受容体を介して肝細胞に取り込まれます。肝機能が障害されると取り込みが低下するので、慢性肝炎や肝硬変などで、肝臓の機能を評価することができます。腫瘍などで肝切除手術を行う場合、残存肝機能の予測にも用いられます。

以前は、肝機能のイメージングに99mTc-フチン酸コロイドや99mTc-スズコロイドがよく用いられました。肝臓にはクッパー細胞という、異物を貪食(どんしょく=食べるように細胞内に取り込む)する細胞があり、コロイド(微粒子)を取り込むため、99mTc標識したコロイドを静脈注射すると肝臓が画像化されます。脾臓や骨髄にも網内系細胞と呼ばれる貪食細胞があるため同時に画像化され、とくに肝機能が低下するとこれら肝臓以外への集積が高まります。

 

(3)胆道のイメージング

肝臓はさまざまな物質を取り込んで代謝し(多くの場合グルクロン酸という物質を抱合(ほうごう)させて)、胆汁として胆管に排泄します。胆汁は胆嚢に蓄えられ、十二指腸に排出されて腸管にて消化を助けますが、不要になった物質を体外に排出する役割もあります。99mTc-PMTはこの過程を経て処理されるので、静脈注射後ガンマカメラでダイナミックスキャンを行うと、まず肝臓が画像化され、ついで放射能が肝実質から胆管や胆嚢に移動し、最後に腸管が描出されます。臨床的に肝・胆道シンチグラフィーは、肝臓からの胆汁排泄機能と胆道の閉塞をみるために用いられます。たとえば、黄疸(注1)の原因を診断したり、胆嚢炎など胆管の通過障害をおこす疾患を診断したり、あるいは先天性の胆道閉鎖の診断にも用いられます。

 

(4)門脈のイメージング

普通の臓器は、心臓からの動脈が入って枝分かれして毛細血管となり、それが合流して静脈となって臓器から出て心臓に戻ります。ところが腸管では、毛細血管が合流すると門脈という血管になり、それが肝臓に入って再び枝分かれし、最後に肝静脈として肝臓から出て心臓に戻ります。肝臓は腸管で吸収された栄養分や有毒物質を処理するので、腸管から出てくる血液をいったんすべて肝臓で受ける、というこの仕組みは都合よくできています。

門脈のイメージングでは、肛門からチューブを直腸に入れて201TlClまたは123IMPを注入し、腹部をガンマカメラでダイナミックスキャンすると、門脈ついで肝臓が描出されます。肝硬変などで門脈の流れがわるくなると、門脈の血液の一部が肝臓を通らずに直接静脈に流れるため、肝臓の集積が低下します。

 

(5)メッケル憩室(異所性胃粘膜)のイメージング

胃の粘膜の細胞は、血液中から物質を取り込んで胃液をつくり分泌します。99mTcO4-(過テクネチウム酸)を静脈注射すると、Cl-などと同様に胃の粘膜に取り込まれるので、胃が描出されます。

まれに、メッケル憩室といって、小腸にくぼみがありそこに胃の粘膜があって(異所性胃粘膜)、炎症を起こし腹痛や下血の原因となることがあります。99mTcO4-を静脈注射して撮影すると、腹部に異常集積として描出されます。

 

(6)消化管からの出血

消化管からの出血が疑われるが部位がわからない場合、99mTc-RBC(99mTc標識赤血球)を静脈注射して経時的にガンマカメラで撮影すると、腸管内に出血した血液が描出され、腸管の中を移動するようすがわかります。99mTc-RBCは患者自身の赤血球を99mTcで標識したものを用います(注2)。出血が断続的に起こる場合でも検査時に出血があれば画像化できますが、あまりに微量の出血はわかりません。

 

(7)消化管からのタンパク漏出

低タンパク血症の原因として消化管からタンパクが漏出する場合があります。99mTc-HSA-DTPAはタンパク質(アルブミン)を99mTc標識した薬剤で、静脈注射したのち時間経過を追って撮影すると、漏出があれば腸管が描出されるので、その部位を画像化することができます。

 

(8)消化管の運動と通過時間

 99mTc-DTPAを飲食物と一緒に経口摂取させ、ガンマカメラで経時撮影すると、食道、胃、小腸、大腸と移動するようすがわかります。消化管の運動低下や亢進、逆流、通過障害などをきたす疾患の診断に用いられます。

 

 

注1)黄疸は、肝臓における胆汁の生成や排泄の障害あるいは胆管の通過障害によって、胆汁の成分であるビリルビンがいわば肝臓から血液に逆流することによっておこります。

 

注2)99mTcはジェネレータ(本シリーズ第4回参照)から生理食塩水で抽出されると、過テクネシウム酸(99mTcO4-)の形で得られます。99mTcO4-において、99mTc原子は7価(電子が7つ奪われた形)になっています。99mTcは還元される(奪われた電子が戻される)とさまざまな化合物に結合するという性質があるので、99mTcで化合物を標識する際には、塩化第一スズなどの還元剤(電子を与える薬品)を用いて、3価ないし4価に還元します。赤血球を99mTcで標識する場合は、塩化第一スズピロリン酸を静脈注射した後、採血して得た赤血球に99mTcO4-を加えると、赤血球内のヘモグロビンに99mTcが結合し、赤血球を標識することができます。また、この標識をより簡便に体内で行うこともでき、予め塩化第一スズピロリン酸を静脈注射した後99mTcO4-を静脈注射すると、体内にて赤血球を99mTcで標識できます。