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ASCA

 第17回 SUV

SUV(standardized uptake value)は、PETやSPECTにて放射性薬剤の腫瘍や臓器への集積の強さを表すための簡易的な指標で、

SUV=画像で測定した腫瘍や臓器の放射能濃度÷(放射能投与量÷体重)

です。ただし、放射能は時間とともに減衰するので、投与時刻に合わせて減衰補正して計算します。この式が意味するところは、もし尿などへの放射性薬剤の排泄が無く、全身いたるところ均一に分布しているならば(そして人体の比重を1とすれば)、全身いたるところSUV=1となります。SUVとは、このような均一な分布を想定した場合と比べて、腫瘍や臓器の放射能濃度が何倍高いかを表すわけです。(注1)

SUVはとくにFDGによるがんのPET検査でよく用いられ、文献にもよく値が書かれていますが、どちらかというと乱用される傾向があり、一部にはSUV値で何でもわかるかのような誤解まであります。しかし、SUVには以下に述べるようにいくつか注意すべき点があるので、その解釈は慎重に行う必要があります。

(1)SUVは「総量」でなく「濃さ」の指標
SUVは集積した放射性薬剤の濃度(単位体積あたりの放射能)の指標であり、臓器や腫瘍全体に集まった放射性薬剤の量の指標ではありません(注2)。たとえば、腫瘍のSUVが高くてもサイズが小さければ腫瘍全体に集まった放射能量は少なく、SUVが低くても大きければ腫瘍全体に集まった放射能は多くなります。腫瘍のFDG-PETでは、FDG集積の強い(濃度が高い)腫瘍は一般に悪性度が高く、FDG集積の弱い(濃度が低い)腫瘍は悪性度も低い傾向があるため、SUVが好んで用いられますが、SUVにはサイズが考慮されていないことを念頭に置く必要があります。

(2)ROI内の平均値と最大値ではSUVが異なる
腫瘍のSUVを計算する際には、腫瘍に関心領域(ROI)(本シリーズ第16回参照)を設定してROI内部の放射能濃度を求めますが、腫瘍は通常不均一で、集積の強いところもあれば弱いところもあります。当然ROIの設定方法によってROI内平均値が変わってきます。そこで多くの文献では、ROI内の平均でなく最大値を呈する画素の値を用いてSUVを計算しています(SUVmaxという)。この背景にある考え方は、患者にとって重要なのは腫瘍内部で最も活発な部分の集積がどれだけ高いかであって、壊死の部分まで一緒に平均するのは意味が無いというわけです(注3)。SUVmaxを使うとSUV値がROIの取り方に依存しなくなって好都合ですが、後述するように装置や画像再構成法への依存が高まり、雑音の影響も受けやすくなります。

(3)放射性薬剤投与後撮像までの時間に依存する
放射性薬剤の集積は投与後の時間とともに変化します。腫瘍のFDG-PET検査は通常FDG投与後60分くらいに撮像しますが、その時点でFDGの集積が一定になるわけでなく、90分、120分と経過するにつれて集積が増えてゆくがんが多いです。したがって、SUV値を測定するときは投与後の時間を指定しなければ意味がありません。

(4)装置と撮像条件に依存する
PETやSPECTはカメラの機種や撮像条件によって分解能と雑音が変わり、SUV値は分解能と雑音の影響を受けるため装置や撮像方法、画像再構成方法に依存します。とくに、部分容積効果(partial volume effect)(注4)によって小さい腫瘍のSUV値が目減りして測定される現象は重要です。

(5)体型が標準的でない患者は比較できない
放射性薬剤は血液中を流れて臓器や腫瘍に到達するので、集積の強さを評価するときは血液中の濃度と比較するのが適当と考えられます。放射性薬剤は投与されるとまず循環血液中に分布し、循環血液量はほぼ体重に比例するため、上の式で「放射能投与量÷体重」となっているところは、実は投与直後の血液中の放射性薬剤の濃度にほぼ比例するわけです。ところが、あまりに太っている患者ややせている患者など、標準体型からはずれると循環血液量が体重と比例しません。そこで、上式の体重のかわりに、体重と身長から導いた体表面積値などを用いるSUVも提案されています。

(6)腎不全など患者の状態にも依存する
血液中の放射性薬剤は、時間とともに減少し消失してゆきますが、その速さは全身臓器への取り込みや肝臓での代謝、腎臓からの尿排泄に依存します。血液中からの消失が速いと、腫瘍や臓器に集積する前に血中から無くなるので、SUVは低くなります。FDGは尿に排泄されるので腎不全があると同じ投与量でも血中濃度が高くなり、運動すると筋肉への取り込みが増えるので血中濃度が低くなります。また、FDGが腫瘍に取り込まれる際にはブドウ糖と競合するので、一般に血糖が高いときにはFDGのSUVは低めになります。SUVにはこれら患者の状態の影響が補正されていません。

(7)SUVが生物学的性質を反映するかは別問題
SUVは放射性薬剤の集積の強さの指標であって、それが生物学的あるいは医学的特徴をどれくらい反映するかは別問題です。がんのFDG-PET検査の場合、一般にFDGの集積はブドウ糖代謝を反映し、ブドウ糖代謝の盛んな腫瘍は一般に悪性度が高いと言われていますが、当然例外もあります。

このように、SUVはさまざまな因子の影響を受けるので、十分注意して用いる必要があります。したがって、FDGのSUVに境界値を決めてそれより高いか低いかで単純に悪性か良性かを鑑別するのは誤りです。また、同一患者にてがんの治療効果をSUV値で評価する場合には、カメラ、撮像条件、患者の状態をつねに一定にする必要があります。

 


注1)上の式で、臓器や腫瘍の放射能は画像の上で測定し、投与量はドースキャリブレータで測定するので、両者の単位を合わせるために、PETやSPECT装置の校正(クロスキャリブレーション)を行う必要があります(本シリーズ第16回の注1参照)。

注2)臓器に集まった放射能量が投与した放射能量の何%であるか(減衰補正して)を、「摂取率」といいます。たとえば甲状腺の核医学検査で行われる「甲状腺ヨード摂取率」とは、投与した放射性ヨウ素(123I または131I )のうち何%が甲状腺全体に集まったかを表し、甲状腺機能の指標となります。甲状腺は臓器全体として機能を発揮するので、甲状腺機能を評価するためには、放射性ヨウ素の濃度ではなく総量が重要です。

注3)がんを顕微鏡で見ると、がん細胞がぎっしり集まっているところ、リンパ球など炎症細胞が集まっているところ、細胞があまり無くて血管や線維があるところ、壊死(えし)と呼ばれる部分的に死んでしまったところ、など、さまざまな部分があることがわかります。FDGは一般に活発ながん細胞や炎症細胞に強く集まります。

注4)PETやSPECTは分解能が無限に良くは無いため、画像は実際の分布をぼかしたようになり、放射能集積部位が小さいときは値が周囲に「漏れ出して」低く測定され、値が周囲よりも低い所は周囲から「漏れ込んで」高く測定されます。これを部分容積効果(partial volume effect)といい、分解能がわるいほど顕著です。