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 第12回 PETカメラの原理

PETカメラは、陽電子放出核種(ポジトロンエミッタ)(本シリーズ第2回参照)の体内分布とその時間経過を画像化するために用いられる装置で、PET装置ともいいます。陽電子放出核種から放出される陽電子(ポジトロン)は、ごく短い距離(注1)を進むと止まります。陽電子はプラスの電気をもった電子で、普通の電子(マイナスの電気をもつ)のいわば「反物質」であり、周囲に多数ある普通の電子と結合して消滅し、一対のガンマ線(消滅ガンマ線、annihilation γray)が正反対の方向に放射されます(注2)。この消滅ガンマ線をキャッチしてその出所である陽電子放出核種の分布を画像化する装置がPETカメラです。

PETカメラでは、図1のように多数のシンチレーション検出器(シンチレータ+光電子増倍管。本シリーズ第10回参照)を円環状に配列しておき、どれか2つの検出器(たとえばAとB)が同時にガンマ線を検出したとき、その2つを結ぶ直線AB上にRIがあったとみなします。これを同時計数(coincidence)といいます(注3)。PETカメラは同時計数によってガンマ線の入射方向を決めるので、ガンマカメラやSPECTのようなコリメータがありません。このように同時計数によって消滅ガンマ線を検出することこそがPETカメラの本質で、ガンマ線を1本だけ検出するガンマカメラやSPECT装置とは原理が根本的に違います。PETがSPECTに比べて感度や定量性などの物理的性質が優れるのはこのためです。

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図1:PETカメラの原理図2:あらゆる検出器の対から投影データを得る

 

 

図2のようにあらゆる検出器の対の間で同時計数をとると、ちょうど180度すべての方向から眺めたように、この面に分布するRIの投影データが得られます。それからSPECTと同じようにいわゆるCTの原理を用いてこの面に分布するRIの分布を画像化(画像再構成、reconstruction)するわけです。

消滅ガンマ線のエネルギーは511keVで、99mTc(141keV)などSPECTで用いられる単光子放出核種にくらべてエネルギーが高いので、PETカメラでは放射線検出器のシンチレータとしてBGO、GSO、LSOといった、高エネルギーのガンマ線をキャッチする能力が高い物質が用いられます。また、シンチレータの形状は、分解能を向上させかつ高い計数率に耐えられるように、大きさ数mmの小さい結晶がきわめて多数配列されています。   

通常のPETカメラは、図3のようにトンネル型をしています。トンネルの内面には、図1や図2の円環状の検出器リングが何層にも円筒状に重ねられていて、同時に多数の断面の画像を撮像できます。このとき、ひとつのリングだけでなく、図4のように異なる検出器リングの間でも同時計数をとれば、スライス面に対して傾いた方向に放射される消滅ガンマ線も検出できるので、感度が飛躍的に上がります。これを三次元(3D)収集といいます(注4)。3D収集では、検出器対の数が多くデータの量が膨大となるうえ、投影データからの画像再構成も三次元となって数学的に難解なのですが、計算アルゴリズムとコンピュータの発達によって実用化され、現在ではPETカメラは3D収集が主流となっています。
 

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図3:PETカメラ図4:3D収集

 

注1) 陽電子が進む距離を飛程(positron range)といい、水中や身体組織中ではだいたい1mmくらいです。飛程は放射性同位元素(RI)の種類によって異なり、陽電子のエネルギーが高いものでは長くなります。後出の消滅ガンマ線は陽電子が止まったところから出るので、陽電子のエネルギーが高い核種は、PET画像の分解能がそれだけわるくなります。11Cや18Fは幸い陽電子のエネルギーが低いので、この影響は少ないです。

注2) 電子は粒子ですが、ガンマ線は光と同じ電磁波です。すなわち物質(質量)が消えてエネルギーに変わります。消滅ガンマ線のエネルギーは、電子の質量が決まっているので、RIの種類や陽電子のエネルギーによらず、511keVと一定です。なお、2本の消滅ガンマ線の向きはほぼ180度ですが、陽電子が停止する直前の運動量がゼロではないので正確には180度になりません(角度揺動(angular deviation)といいます)。

注3) ここで同時とは、ある短い時間(タイムウィンドウ)の間に2つの検出器がそれぞれガンマ線をキャッチした場合に同時とみなし、その検出器の対に1カウント加えます。また、各検出器がキャッチしたガンマ線のエネルギーはエネルギー分別回路によってエネルギーをチェックし、散乱線等を除外します(本シリーズ第11回の注3参照)。なお、2つの検出器を結ぶ直線をLOR(line of response)といいますが、飛程(注1)と角度揺動(注2)のため、RIの位置はLORの真上ではなく若干ずれます。これがPETの分解能の理論的限界です。

注4) 2D収集では、スライス面に対して傾いた方向から入射するガンマ線を遮断するために、検出器リングとリングの間にセプタと呼ばれる鉛のリングを入れます。したがって、2Dと3Dの両方ができるPETカメラではセプタを出し入れしてそれぞれの収集に対応できるようになっています。セプタは散乱線を除去する効果がありますが、3D収集ではセプタが無いためどうしても散乱線の影響を受けやすく、そのため3Dは2Dよりも若干定量性に劣るといわれています。