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 第5回 放射能の単位ベクレル

放射能は、ベクレル(Bq)という単位で表します。1ベクレルとは1秒間に1崩壊する放射能の強さです。

1ベクレル=1崩壊/秒

ベクレルという単位はあまりに小さいので、普通はキロベクレル(1000ベクレル、kBq)やメガベクレル(100万ベクレル, MBq)、ギガベクレル(10億ベクレル、GBq)という単位がよく使われます。ちなみに、ベクレルとは、1896年、つまりレントゲンがX線を発見した翌年に、放射性物質を発見した人の名です。

放射性同位元素は崩壊する(壊変ともいう、壊れて別の原子に変わる)ときに放射線を出すので、もし1崩壊につき必ず1本放射線が出るなら(実際はそう単純ではないが)、1ベクレルとは1秒間に1本の放射線が出るような放射能の強さであり、1メガベクレルとは1秒間に100万本の放射線が出るような放射能の強さ、ということになります。

ベクレルは、放射能の「強さ」の単位であると同時に、放射能の「量」すなわち放射性同位元素(放射性物質)の量の単位でもあります。「強さ」と「量」は別の概念なのですが、実は次に説明するように両者は正確に比例するので、区別されずに使われています。

放射性同位元素の崩壊は確率現象で、しかも、1秒間に現在ある原子のうち平均何パーセントが崩壊するか(崩壊定数といいます)が、放射性同位元素の種類によって決まっています。たとえば、フッ素?18(18F)という放射性同位元素(半減期110分)は、崩壊定数が約0.0001、すなわち1秒間に1万個のうち平均1個が崩壊します。今100万個の18F原子があるとすると、次の1秒間にそのうち平均100個が崩壊するというわけです注1)。したがって、18F 原子を100万個含む放射性物質があれば、その放射能の強さは100ベクレル、200万個の18F原子があれば200ベクレルとなって、放射能の強さと放射性原子の数が正確に比例します。それで、たとえば「この注射器には放射性薬剤が9ミリリットル中に300メガベクレル入っているが、患者に200メガベクレル投与したいので、6ミリリットル注射すればよい」というように、放射性物質の量を言い表すのにも、ベクレルが使われます。

崩壊定数は半減期と密接に関係しています。半減期が短い放射性同位元素は、崩壊定数が大きく、速く減衰して無くなります。また、半減期が短い放射性同位元素は、放射能(ベクレル数)の割に原子の数が少ないです注2)

以前は放射能の単位としてキュリー(Ci)が使われていました。今でも使う人が大勢います。現在1キュリーは370億ベクレル(37ギガベクレル)に等しいと決められています。

1キュリー=3.7×1010ベクレル

キュリーという単位は非常に大きいので、通常はミリキュリー(0.001キュリー, mCi)やさらにその1000分の1のマイクロキュリー(μCi)がよく使われます。ちなみに、キュリー夫人は1898年にラジウムを発見した人として、よく知られています。

1キュリーがこのように大きな放射能値になったのは、もともとラジウム(226Ra)1グラムの放射能を1キュリーと定めたためです注3)。その後、より理論的にということでベクレルという単位が定められましたが、今でもしばしばキュリー単位で物事が進められています。たとえば、放射性医薬品などの放射性物質が、1本740メガベクレル(20ミリキュリー)とか1人分185メガベクレル(5ミリキュリー)のような半端なベクレル数で売られていたり、研究計画書に「555メガベクレル投与する」のように半端なベクレル数が書かれていることが多いのは、そのなごりです。


注1) ここで注意すべきことは、第一にどの100個が崩壊するかは誰にもわからないこと、第二に正確に100個崩壊するのではなく90個かも110個かもしれないということ、確率現象というのはそういう意味です。この不確定さ(ばらつき)は、数学ではポワソン分布と呼ばれていて、標準偏差が平均の平方根に等しいことが知られています。たとえば、いまある放射性物質の放射能を1秒間測定して100本の放射線をキャッチしたとすると、本当は95かも105かもしれないという意味でのばらつき(標準偏差)は100の平方根=10、つまり測定値とその精度は100±10カウント/秒となります。かりにこれを100秒間測定した結果が 10000カウントであれば、10000の平方根は100なので10000±100カウント、1秒あたりにすると100±1カウント/秒。すなわち長時間測定して(または感度の高い機器を使って)多くの数の放射線をキャッチするほど測定精度が上がります。

注2) 崩壊定数と半減期の間には、崩壊定数×半減期=0.693(=ln2)という関係があります。また、放射能の強さ=原子の数×崩壊定数です。一般に放射性同位元素は原子の数(すなわちグラム数)がきわめて少なくても十分測定できるだけの放射線(信号)を出すために好んで用いられますが、半減期が短い(崩壊定数が大きい)ものほどその傾向が大きく、より少ない原子数(グラム数)で同じ強さの放射能を得ることができます。

注3) 注2の式を使って計算すると、 226Raの半減期は1590年なので、崩壊定数は0.693÷(1590×365.24×24×60×60)=1.38×10?11[1/秒]。原子量(1モルすなわち6.02×1023個の原子のグラム数)は226なので、1グラムの226Raの放射能の強さは、(6.02×1023÷226)× 1.38×10?11 ≒3.7×1010 ベクレル、すなわちほぼ1キュリーになります。一般に放射能とグラム数(あるいはモル数)の比を、比放射能(この場合はキャリアフリーでの比放射能)といいます。226Raの比放射能は、1Ci/g(37GBq/g)です。上の注2の記述を言い換えると、一般に半減期が短い放射性同位元素ほどキャリアフリーでの比放射能が大きいと言えます。

2008.9.3更新