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ASCA

 第4回 ジェネレータとミルキング

核医学で用いられる放射性同位元素は、サイクロトロンや原子炉で製造されますが、半減期が短いために、製造してから、標識合成して放射性薬剤の形とし臨床使用するまでの間、あまり時間的余裕がありません。ところが、目的とする放射性同位元素が、別の放射性同位元素(親核種)が崩壊した産物(娘核種)として生成される場合には、ジェネレータという便利な仕掛けが使えることがあります。

核医学で最もよく用いられる放射性同位元素であるテクネシウム-99m(99mTc)は、半減期が6時間ですが、実はモリブデン-99(99Mo)という放射性同位元素が半減期約3日で崩壊してできる産物です。モリブデン-99を置いておくと、崩壊してテクネシウム-99mができ、それがまた半減期6時間で崩壊するので、時間がたつとモリブデン-99とテクネシウム-99mの原子数の比が一定になります。これを放射平衡といいます。このとき、生理食塩水を流すと、テクネシウムは生理食塩水に溶けますが、モリブデンは溶けないので、テクネシウム-99mを取り出す(抽出する)ことができます。取り出したテクネシウム-99mは標識合成してシンチグラフィーやSPECT検査などに使います。抽出するとテクネシウム-99mは無くなりますが、また時間がたつとモリブデン-99からテクネシウム-99mができ、約1日たつともとの平衡に戻ります。そこで、翌日また生理食塩水でテクネシウム-99mを抽出して使います。このように、一定の時間がたてばいつでも(テクネシウム-99mの場合は1日1回)、ちょうど牛から乳を搾るように娘核種を抽出できるので、この抽出操作を「ミルキング」といいます。また、ミルキングできる仕掛けがあるものを「ジェネレータ」といいます。

         

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テクネシウム-99mは標識された放射性医薬品として発売されていますが、ジェネレータの形でも発売されています。医療機関がシンチグラフィーやSPECT検査のためにテクネシウム-99m標識の放射性医薬品を購入する場合には、半減期が6時間なので、予め注文予約して検査日の朝に配達してもらい、その日のうちに使わなければなりません。一方、ジェネレータを購入すると、いつでも必要なときにテクネシウム-99mを抽出して使えるので、緊急検査にも対応できます。ジェネレータの半減期は親核種の半減期に従うので、モリブデン-99/テクネシウム-99mジェネレータの場合には半減期が3日、すなわち一度購入すれば約1週間は使えます。

ただし、医療機関でジェネレータを使うためには、抽出したテクネシウム-99mを自分で標識できなければなりません。そのためには、「標識キット」といって、テクネシウム-99mの溶けた生理食塩水を混ぜれば簡単に標識できる形の標識原料が発売されている必要があります。製薬会社の工場でなければ標識できない放射性医薬品に関しては、この方法は使えません。

放射平衡が成り立つためには、親核種よりも娘核種が速く減衰する(半減期が短い)必要があり、逆の場合には親核種が先に無くなるため放射平衡になりません。また、ジェネレータにするためには、親核種から娘核種を分離抽出する操作が簡単かつ確実にできる必要があり、抽出後の標識も容易にできる必要があります。したがって、ジェネレータから製造できる放射性同位元素は限られますがこのような条件がみたされれば、ジェネレータは非常に便利な仕掛けとなります。

なお、平衡になるまでに要する時間は娘核種の半減期で決まり、テクネシウム-99mの場合は6時間なので、4半減期すなわち24時間が目安です。(抽出した娘核種は、もし抽出しなかったならばジェネレータの中で同じように減衰してゆくべきものなので、抽出した娘核種が減るにしたがってジェネレータ内で新たに娘核種が生成されるからです。)

                                                    2008.7.31更新