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ASCA

 第3回 核医学を支える4つの柱

  核医学とは、放射性同位元素(RI)で標識された化合物(放射性薬剤)を、患者や被験者に投与し、その分布と時間経過を特殊なカメラ(ガンマカメラ、SPECTカメラ、PETカメラ)で撮像し、得られた画像データを解析して、病気を診断したり医学研究を行う分野です。しがって、技術的観点から見ると、核医学は次の4つの要素(柱)から成り立っています(図)。

 

          


  第1の柱は放射性同位元素です。世の中に何千とある放射性同位元素のなかから、いかに核医学に適したものを見出すか、また、すでに用いられている放射性同位元素に関してよりよい製造方法を考案するかという分野です。学問分野としては、核物理学や核化学の一分野にあたります。放射性同位元素は核反応によって製造し、サイクロトロンなどの加速器を用いるか、原子炉で中性子を用いて製造します。また、ジェネレータで製造する場合もあります。一般に装置が大仕掛けとなるのと、新しいテーマはそう多くないので、この分野で研究に取り組んでいる人は少ないようです。

  第2の柱は放射性薬剤です。放射性同位元素をさまざまな化合物を標識して、生体に注射したとき見たいものに集まるような放射性薬剤を開発します。学問分野としては、放射性薬品化学と呼ばれます。放射性薬剤は「くすり」の一種なので、大学の薬学部や製薬企業と同じように、薬剤を作る「化学」の領域と、その性質を明らかにする「生物学」の領域とがあります。化学の領域では、放射性薬剤の候補となる標識化合物を合成するための合成経路や反応条件、原料(前駆体)、分離精製方法、品質管理方法を考案し、安定して合成するための合成装置を設計します。一般の薬と異なり、半減期が短いのと、放射性物質の量(グラム数)が非常に小さいので、一般の有機合成化学とは異なる難しさがあります。一方生物学の領域では、培養細胞や動物などを用いて、その標識化合物が何に集まるかを明らかにします。ここで得られた情報からどのような標識化合物が何に集まるかを考察して、新たな放射性薬剤の設計に活かします。さらに、人間に用いることを考えて、毒性を調べたりや被ばく線量を計算します。多くの大学の薬学部には放射性薬品化学を担当する部署があり、教育と研究が行われています。また、放射性薬剤を専門に開発し製造販売する企業もいくつかあります。

  第3の柱は、撮像装置です。放射性薬剤の体内分布や時間経過を画像に撮像するための方法を考案します。学問分野としては医用工学の一分野です。SPECTカメラやPETカメラは放射線をキャッチするための「放射線検出器」と画像を作るコンピュータを組み合わせたようなものです。放射線検出器としては、核医学ではシンチレーション検出器が多く用いられ、新しい検出器の開発が大きなテーマとなります。ついで、それを装置として組みSPECTカメラやPETカメラを設計し、製造します。どの機器でもそうですが、ハードとソフトがあります。感度と分解能と定量性のよいカメラを開発することが課題となります。いくつかの大学の医学部や工学部、診療放射線技師を養成する学校には、放射線計測を専門に行う医用工学の部著があり、教育と研究が行われています。企業では、SPECTカメラやPETカメラメーカーを製造するメーカーで新製品の開発が行われています。

  第4の柱は、画像データ解析です。SPECTカメラやPETカメラで得られた画像は放射能の分布やその時間経過を表していますが、これを加工して、診断に役立つ画像や数値を抽出します。このうち、臓器の放射能の時間経過から代謝率や受容体など生物学的に意味のある量を数値として算出する分野をとくに動態モデル解析といいます。学問分野としては、画像工学、情報処理学、数理統計学などが関係します。大学や企業では上に述べた撮像装置の開発とあわせてデータ解析の研究が行われているほか、医学研究者や医師、放射線技師の中にも、コンピュータを駆使して核医学画像データ解析に取り組んでいる人がたくさんいます。

 


                                                    2008.7.1更新