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ASCA

 第2回 核医学で用いられる放射性同位元素

放 射性同位元素(radioisotope, RI)は数多くありますが、核医学で用いられるものは限られています。下表にシンチグラフィーやSPECTで用いられる、光子を1本だけ出す単光子放出核 種(single photon emitter)と、PETで用いられる、ポジトロンを出す陽電子放出核種(positron emitter)の、それぞれ主なものをあげました。

放射性同位元素名 記号 半減期 崩壊形式 光子のエネルギー(keV)
単光子放出核種(シンチグラフィー、SPECT用)
テクネシウム-99m 99mTc 6時間 核異性体転移 141
インジウム-111 111In 3日 軌道電子捕獲 171, 245
ヨウ素-123 123I 13時間 軌道電子捕獲 159
ヨウ素-131 131I 8日 β-崩壊 364
タリウム-201 201Tl 3日 軌道電子捕獲 71.80
陽電子放出核種(PET用)
炭素-11 11C 20分 β+崩壊 511(β+)
窒素-13 13N 10分 β+崩壊 511(β+)
酸素-15 15O 2分 β+崩壊 511(β+)
フッ素-18 18F 110分 β+崩壊, 軌道電子捕獲 511(β+)

  元素の名前に続く数字は質量数、つまり陽子と中性子の数の合計です(質量数は元素記号の左上またはTc-99mのように書きます)。そもそも同位元素とは 陽子の数が同じで中性子の数が異なる原子をいい、両者の数の割合が適当である原子は安定ですが、中性子が過剰または不足している原子は不安定で放射線を出 して崩壊するので、放射性同位元素といいます。すなわち、放射性同位元素は放射線を出して崩壊しながら無くなってゆくものであり、半分になる時間を半減期 といいます。2半減期の時間がたてば4分の1、3半減期で8分の1になります。また99mTcの「m」は核異性体といって質量数が同じでエネルギー状態が高い同位元素がしばらくの時間存在する場合をいいます。

  核医学イメージングによく用いられる単光子放出核種には、次のような特徴があります。(1)出てくる放射線がγ線または示性X線(光子=電磁波)だけであ り、α線やβ線(粒子)は出ない崩壊形式である。核異性体転移や軌道電子捕獲がこれにあたります。粒子は身体から出てこないので、被ばくが増えるだけでイ メージングに役立たないからです。(2)光子のエネルギーが適当な値である。低すぎると身体から出て来ず、高すぎるとカメラでうまくキャッチできないため よい画像が得られません。(3)半減期が適当な長さである。短すぎると扱いにくく、長すぎると撮影後も長く残り放射線を出し続けます。(4)製造が容易で 安価。(5)いろいろな化合物に標識できる。

  一方、PETで用いられるRIにはこの原則があてはまりません。β+崩壊によってβ+線(陽電子=粒子)が出て、陽電子が消えるときに出る消滅γ線のエネ ルギーは511keVと高く、さらに半減期があまりに短いため原則として病院内にサイクロトロンを置いてRIを自家製造する必要があります。しかし、炭 素、窒素、酸素、フッ素(=水素と似ている)といった身体を構成している元素のRIが使えるため、水、酸素ガス、ブドウ糖、アミノ酸、神経伝達物質など身 体に存在する物質を標識でき、不便であるにもかかわらず昔から注目され使われてきました。これに対して、テクネシウムやインジウムは金属なので、生体物質 への標識がそう簡単ではありません。

                                                    2008.6.2更新