2009年8月

SUV(standardized uptake value)は、PETやSPECTにて放射性薬剤の腫瘍や臓器への集積の強さを表すための簡易的な指標で、

SUV=画像で測定した腫瘍や臓器の放射能濃度÷(放射能投与量÷体重)

です。ただし、放射能は時間とともに減衰するので、投与時刻に合わせて減衰補正して計算します。この式が意味するところは、もし尿などへの放射性薬剤の排泄が無く、全身いたるところ均一に分布しているならば(そして人体の比重を1とすれば)、全身いたるところSUV=1となります。SUVとは、このような均一な分布を想定した場合と比べて、腫瘍や臓器の放射能濃度が何倍高いかを表すわけです。(注1)

SUVはとくにFDGによるがんのPET検査でよく用いられ、文献にもよく値が書かれていますが、どちらかというと乱用される傾向があり、一部にはSUV値で何でもわかるかのような誤解まであります。しかし、SUVには以下に述べるようにいくつか注意すべき点があるので、その解釈は慎重に行う必要があります。

(1)SUVは「総量」でなく「濃さ」の指標
SUVは集積した放射性薬剤の濃度(単位体積あたりの放射能)の指標であり、臓器や腫瘍全体に集まった放射性薬剤の量の指標ではありません(注2)。たとえば、腫瘍のSUVが高くてもサイズが小さければ腫瘍全体に集まった放射能量は少なく、SUVが低くても大きければ腫瘍全体に集まった放射能は多くなります。腫瘍のFDG-PETでは、FDG集積の強い(濃度が高い)腫瘍は一般に悪性度が高く、FDG集積の弱い(濃度が低い)腫瘍は悪性度も低い傾向があるため、SUVが好んで用いられますが、SUVにはサイズが考慮されていないことを念頭に置く必要があります。

(2)ROI内の平均値と最大値ではSUVが異なる
腫瘍のSUVを計算する際には、腫瘍に関心領域(ROI)(本シリーズ第16回参照)を設定してROI内部の放射能濃度を求めますが、腫瘍は通常不均一で、集積の強いところもあれば弱いところもあります。当然ROIの設定方法によってROI内平均値が変わってきます。そこで多くの文献では、ROI内の平均でなく最大値を呈する画素の値を用いてSUVを計算しています(SUVmaxという)。この背景にある考え方は、患者にとって重要なのは腫瘍内部で最も活発な部分の集積がどれだけ高いかであって、壊死の部分まで一緒に平均するのは意味が無いというわけです(注3)。SUVmaxを使うとSUV値がROIの取り方に依存しなくなって好都合ですが、後述するように装置や画像再構成法への依存が高まり、雑音の影響も受けやすくなります。

(3)放射性薬剤投与後撮像までの時間に依存する
放射性薬剤の集積は投与後の時間とともに変化します。腫瘍のFDG-PET検査は通常FDG投与後60分くらいに撮像しますが、その時点でFDGの集積が一定になるわけでなく、90分、120分と経過するにつれて集積が増えてゆくがんが多いです。したがって、SUV値を測定するときは投与後の時間を指定しなければ意味がありません。

(4)装置と撮像条件に依存する
PETやSPECTはカメラの機種や撮像条件によって分解能と雑音が変わり、SUV値は分解能と雑音の影響を受けるため装置や撮像方法、画像再構成方法に依存します。とくに、部分容積効果(partial volume effect)(注4)によって小さい腫瘍のSUV値が目減りして測定される現象は重要です。

(5)体型が標準的でない患者は比較できない
放射性薬剤は血液中を流れて臓器や腫瘍に到達するので、集積の強さを評価するときは血液中の濃度と比較するのが適当と考えられます。放射性薬剤は投与されるとまず循環血液中に分布し、循環血液量はほぼ体重に比例するため、上の式で「放射能投与量÷体重」となっているところは、実は投与直後の血液中の放射性薬剤の濃度にほぼ比例するわけです。ところが、あまりに太っている患者ややせている患者など、標準体型からはずれると循環血液量が体重と比例しません。そこで、上式の体重のかわりに、体重と身長から導いた体表面積値などを用いるSUVも提案されています。

(6)腎不全など患者の状態にも依存する
血液中の放射性薬剤は、時間とともに減少し消失してゆきますが、その速さは全身臓器への取り込みや肝臓での代謝、腎臓からの尿排泄に依存します。血液中からの消失が速いと、腫瘍や臓器に集積する前に血中から無くなるので、SUVは低くなります。FDGは尿に排泄されるので腎不全があると同じ投与量でも血中濃度が高くなり、運動すると筋肉への取り込みが増えるので血中濃度が低くなります。また、FDGが腫瘍に取り込まれる際にはブドウ糖と競合するので、一般に血糖が高いときにはFDGのSUVは低めになります。SUVにはこれら患者の状態の影響が補正されていません。

(7)SUVが生物学的性質を反映するかは別問題
SUVは放射性薬剤の集積の強さの指標であって、それが生物学的あるいは医学的特徴をどれくらい反映するかは別問題です。がんのFDG-PET検査の場合、一般にFDGの集積はブドウ糖代謝を反映し、ブドウ糖代謝の盛んな腫瘍は一般に悪性度が高いと言われていますが、当然例外もあります。

このように、SUVはさまざまな因子の影響を受けるので、十分注意して用いる必要があります。したがって、FDGのSUVに境界値を決めてそれより高いか低いかで単純に悪性か良性かを鑑別するのは誤りです。また、同一患者にてがんの治療効果をSUV値で評価する場合には、カメラ、撮像条件、患者の状態をつねに一定にする必要があります。

 


注1)上の式で、臓器や腫瘍の放射能は画像の上で測定し、投与量はドースキャリブレータで測定するので、両者の単位を合わせるために、PETやSPECT装置の校正(クロスキャリブレーション)を行う必要があります(本シリーズ第16回の注1参照)。

注2)臓器に集まった放射能量が投与した放射能量の何%であるか(減衰補正して)を、「摂取率」といいます。たとえば甲状腺の核医学検査で行われる「甲状腺ヨード摂取率」とは、投与した放射性ヨウ素(123I または131I )のうち何%が甲状腺全体に集まったかを表し、甲状腺機能の指標となります。甲状腺は臓器全体として機能を発揮するので、甲状腺機能を評価するためには、放射性ヨウ素の濃度ではなく総量が重要です。

注3)がんを顕微鏡で見ると、がん細胞がぎっしり集まっているところ、リンパ球など炎症細胞が集まっているところ、細胞があまり無くて血管や線維があるところ、壊死(えし)と呼ばれる部分的に死んでしまったところ、など、さまざまな部分があることがわかります。FDGは一般に活発ながん細胞や炎症細胞に強く集まります。

注4)PETやSPECTは分解能が無限に良くは無いため、画像は実際の分布をぼかしたようになり、放射能集積部位が小さいときは値が周囲に「漏れ出して」低く測定され、値が周囲よりも低い所は周囲から「漏れ込んで」高く測定されます。これを部分容積効果(partial volume effect)といい、分解能がわるいほど顕著です。
 

PETやSPECTの画像は、各画素にその地点の放射能濃度の値が乗っていて、その値を表示条件に従って色に置き換えて画像に表示したものです(注1)。したがって、ある臓器や病変に集積した放射能の量や濃度を、画像データから数値として得ることができます。そのためには画像の上で測定したい部位を囲みます。これを、関心領域(region of interest, ROI, ロイ)を設定するといいます。ROIは円形、方形、フリーハンドなど、さまざまな形のものが用いられます。また、複数のROIを組み合わせたものを1つのROIとして扱うこともあり、その複数のROIは異なる断面にまたがることもあります(注2)。

 

下図は脳のFDG-PET画像の1断面において、右(画面では左)の前頭葉と呼ばれる部位にさまざまな位置、形、大きさのROIを設定し、その領域の放射能濃度を測定したものです。

 

16-1.jpg

 
 図:脳FDG-PET画像にて右前頭葉にさまざまなROIを設定した。(PET画像は3枚とも同じ)。

 各ROIの放射能濃度測定値は、#1: 25.1 #2: 26.0  #3: 20.4  #1~3の集合: 23.7

#4: 20.1  #5: 25.7  #6: 24.7  #7: 25.1  #8: 23.0  #4~8の集合: 23.8

#9: 23.6  #10: 24.9  (単位はいずれもkBq/ml)。
 

脳は構造が複雑で、前頭葉といっても広く、放射能の分布が不均一なので、ROIの位置を動かしたり形や大きさをかえると値が変わります(注3)。したがって、脳画像のROI取りにはかなりの経験が必要です。論文などには、前頭葉の放射能濃度(あるいはそれから計算した血流量など)がいくらであったと書かれていますが、その数値を得るために用いたROIによって結果が変わりうることを念頭に置いて論文を読む必要があります。そのため、論文によっては、どのようなROIを設定したかを論文中に図として提示しているものもあります。

 

ある部位の放射能濃度(Bq/ml)ではなく、ある臓器や高集積病変に集まった放射能の合計(Bq)を測定したいときは、それが写っているすべての断面において臓器や病変全体を囲むようにROIをとる必要があり、かなり面倒です。そのような場合には、画素値がある値以上の領域を自動的に囲むソフトウエアが用いられることもあります。

 

核医学の画像は形態情報が乏しいため、ROIを取りたい臓器や病変の放射能集積が低い場合など、対象とする画像上にROIをとる手がかりが無い場合もあります。そこで、ほぼ同じ位置で撮影されたCTやMRI、あるいは形態がよくわかる別の核医学画像と見比べながらROIを取るのもよい方法です。もしその参照画像が完璧に同じ位置であるなら(すなわちCTやMRIとレジストレーション(注4)されているか、同一検査同位置での別画像なら)、ROIの設定操作自体を参照画像の上で行うことも可能です。ただし、レジストレーション処理にはどうしてもわずかなずれが伴うので、CTやMRIで取ったROIが、測定対象の核医学画像上で適切な位置になっているか、ROIを表示して確認する必要があります。

 

ROIを人間が取るとどうしても主観が入り、また時間もかかります。それを嫌って、客観的にROIを取る方法も用いられています。ひとつの方法は、ある値以上の画素値をもつ画素を囲う方法で、上に述べたように放射能が集積した臓器や病変全体を囲うのに適しています。もうひとつは、標準となる画像にあらかじめROIを定義しておきそれを対象画像に合わせこむ方法で、脳においてよく用いられます。しかし、そのような「客観的な」方法で常に適切にROIが取られるかは保証の限りではありません。

 

以上はPETやSPECTのように、画素値が放射能濃度の単位で得られる断層画像の場合です。これに対して、シンチグラフィーの画像(シンチグラム)では、各画素の値はガンマカメラの視野内の各点に入射し検出された放射線の数なので、前後の重なりがあり、また体内の深い所は浅い所に比べて放射線が多く吸収されるため寄与が少なくなります。したがって、シンチグラムでは画素値は単なるカウントとして扱います。シンチグラム上にROIをとって臓器や病変に集積した放射能を測定する場合には、必ずその近くにバックグラウンド(背景)ROIを取ります。測定したい臓器や病変の前後には放射能がわずかながら存在し、その分がROI値に加算されているため、バックグラウンド領域にROIを取って引き算し補正するわけです。


 

注1:画素に数値が乗っていることに関しては、本シリーズ第15回参照。なお、画素の単位が放射能濃度(Bq/ml)で表されるためには、装置の定量性すなわち吸収や散乱などの補正が適切に行われ、さらに画素値を放射能値(ベクレル値)に換算するための校正(クロスキャリブレーション)が行われていることが前提です。クロスキャリブレーションが行われていない場合、画素値は相対的な放射能濃度となりますが、目的によってはそれで十分な場合もあります。

 

注2:ROIが複数の構成成分からなる場合には、混同を避けるためその成分を「閉曲線」と呼ぶこともあります。また、隣接する断面にまたがるROIを取れば立体的な領域に分布する放射能を測定することができますが、そのようなROIは三次元ROIあるいはVOI(Volume of interest)と呼ばれることもあります。ROIは、コンピュータの中では各画素がそのROIに属するか否か(1か0か)にて定義されることが多く、画面で円形に見えるROIもその実体は画素に沿ったギザギザの多角形となります。最近の画像処理装置では、ROIの境界上にある画素はその何%がROI内にあるか(実数値)を定義するものもあります。

 

注3:脳の表面は大脳皮質と呼ばれ、脳細胞が多く集まっていて血流や代謝がさかんなので、一般に放射性薬剤も多く集積します。この大脳皮質が「前頭葉」「頭頂葉」「後頭葉」など、いくつかの部位に分けられています。脳は部位によって働きが異なるので、血流や代謝がいくらであるとか、低下しているとかいう場合には、部位を特定することが非常に重要です。これに対して脳の深部には、神経線維(いわば脳細胞間を結ぶ電線)や脳脊髄液など、放射性薬剤の集積が低いところが多くあります。PETやSPECTのような断面画像の上では、大脳皮質は周辺部(ふち、へり)に位置しcortical rimと呼ばれます。cortical rimは、脳の標本を拡大して観察すると、実は灰白質(脳細胞が集まっている所)と白質(神経線維が走っている所)が複雑に入り組んでいます。核医学画像は、分解能がそれほどよくないため両者を分離して描出することができず、灰白質が多いところは画像上放射能集積が高く、少ないところは低くなり、結果としてcortical rimが不均一に写るわけです。

 

注4:本シリーズ第14回の注2参照。