核医学でイメージングをするためには、第一に放射線(ガンマ線)を検出する必要がありま
す(注1)。放射線を検出するにはさまざまな方法がありますが、核医学では「シンチレー
ション検出器」という種類の放射線検出器がもっとも広く用いられています。これはシンチ
レータと呼ばれる特殊な物質と光電子増倍管、および電子回路から成り立っています(図1)。

図1:シンチレーション検出器
シンチレータ(scintillator)は放射線が入射するとそれをキャッチして弱い光を出す物質で、
核医学では結晶の形をしているものが主に用いられます。シンチカメラ(ガンマカメラ)や
SPECT装置では、NaIというシンチレータがよく用いられます。PETカメラでは、ガンマ
線のエネルギーが高い(511KeV)ため、BGO、GSO、LSOといった、高エネルギーのガ
ンマ線を止める力が大きいシンチレータが用いられます(本シリーズ第2回参照)。
光電子増倍管(photomultiplier tube, PMT、フォトマル)はこの光を電気信号に変える、
いわば光センサで、中が真空のガラス管に電極が入っています。光電面に光があたると電子
(光電子)が発生し、その電子をダイノードと呼ばれる電極の間を飛ばしながら増幅し、最
後に電気パルスとして出力します。光電子増倍管では電子を増幅するために安定した高電圧
電源が必要です。なお、特殊な場合に、光電子増倍管ではなくアバランシェフォトダイオー
ド(APD)という半導体を用いた光センサが用いられることもあります。
電子回路では、電気パルスの大きさからガンマ線のエネルギーを推定することによって、測
定すべき放射性同位元素からのガンマ線かどうかを区別(弁別)し、電気パルスの数を数え
ながらコンピュータのメモリーなどに書き込みます。このようにしてシンチレータに入射し
たガンマ線を検出し、数をカウントするわけです。
シンチレーション検出器を使ってどのようにしてイメージングするかは次回に説明するこ
とにして、ここでは、イメージング以外で用いられる装置を紹介します。
シンチレーション検出器のシンチレータに井戸(ウェル)型の穴を掘って、試料中の放射能
を測定できるようにしたものが、井戸型シンチレーションカウンタ(ウェルカウンタ)です
(図2)。多数の検体をセットしておけばロボットアームが順につかんで測定してくれる装
置もあります。ウェルカウンタは、核医学では、ファントム実験や、放射性薬剤を投与後に
採血して血中の放射能を測定する際などに、用いられます。
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| 図2:ウエルカウンタ | 図3:ガンマプローブ |
また、シンチレーション検出器のシンチレータに、コリメータという鉛の覆いをとりつけて、
ある方向から入射するガンマ線だけをカウントするようにしたものを、指向性シンチレーシ
ョンカウンタといいます。これを手に持てるようにしたものをガンマプローブといい、セン
チネルリンパ節の検査において、放射性医薬品が集まったリンパ節を術中に見出すために用
いられます(図3)。
シンチレーション検出器の性質としては、「感度」、「エネルギー分解能」、「数え落とし」が
重要です。「感度」は、入射したガンマ線のうちどれだけをキャッチできたかで、シンチレ
ータの種類によって異なり、またガンマ線のエネルギーにも依存しエネルギーが高いと透過
力が大きくなって感度が下がります。同じシンチレータで感度を上げるには結晶を大きくす
る必要があります。「エネルギー分解能」は、入射したガンマ線のエネルギーを弁別する能
力で、測定すべきガンマ線を散乱線やノイズから見分けるために必要ですが、これもシンチ
レータの種類に依存します。「数え落とし」は、検出したガンマ線を処理中に次のガンマ線
をキャッチしてもカウントできない現象をいい、どれくらい高い計数率に耐えられるかはシ
ンチレータの種類と電子回路によります。
なお、シンチレーション検出器以外に核医学で用いられる放射線検出器としては、ドースキ
ャリブレータに用いられる電離箱検出器があります。ドースキャリブレータとは患者に放射
性薬剤を投与する前にその放射能量が何メガベクレルあるかを測定する装置で、上に述べた
ウェルカウンタでは放射能が強すぎて測れないため、電離箱が用いられます。(注2)
注1)核医学では放射性同位元素から放射される放射線を検出します。主にガンマ線なので
(示性X線のこともありますが)、本講ではガンマ線と記載しています。X線診断に用いる
X線(阻止X線)と異なり、エネルギーが特定の値に決まっている(単一スペクトル)、線
量率(時間当たりの放射線の量)は低いがたえず放射されている、といった特徴があります。
注2)このほか、放射線防護には、さまざまなタイプのさまざまな放射線検出器が用いられ
ます。小説や映画で放射性物質に汚染されたエリアに入っていく人物が携えている器具が放
射線を検出してピッピッと鳴る場面がありますが、あれはサーベイメータと呼ばれ、今いる
空間に放射線がどれくらい飛び交っているかをリアルタイムで測定する器具です。サーベイ
メータでは、放射線検出器としてガイガーミュラー検出器、電離箱、シンチレーション検出
器などが使われています。また、病院などで放射線を扱う職員が身体につけているのは、ガ
ラスバッジ(蛍光ガラス線量計)やポケット線量計で、前者は1か月間の線量を記録するの
に用いられ、後者はリアルタイムに積算線量を表示します。


