第7回 核医学検査による被ばく

核医学検査では放射線を浴びます。一般に放射線を浴びることを「被ばく」(注1)といいます。どれだけ放射線を浴びたか表す数値を「被ばく線量」あるいは単に「線量」といいます。

核医学検査とX線検査(CTなど)では放射線の浴び方が大きく異なります。

X線検査で用いられるX線管球は、通電している間だけX線が出ます。X線撮影では、撮影したい部位にX線をごく短時間当て通り抜けてきたX線をフィルムに写します(現在はフィルムでなくX線に感光する特殊な板を使うことが多いです)。CTの場合には、撮影する断面に沿って全方向からクルッと回転するようにX線を当てて通り抜けてきたX線を測定し、その断面のX線吸収度の画像を作ります。このように、体外から飛んでくる放射線を浴びることを「外部被ばく」と言います。X線検査では、放射線が当たるのは撮影している間だけで、しかも主として撮影する部位だけに当たります(注2)。したがって、X線検査では、撮影部位が多くなるほど、また撮影枚数が多くなるほど、被ばく線量も多くなります。またX線透視といって持続的にX線を当てながらX線テレビで臓器やカテーテルや造影剤の動きを観察する場合には、意外に線量が多くなります。

これに対して、核医学検査では、放射性同位元素で標識された放射性薬剤を患者に投与し、そこから放出される放射線(ガンマ線など)を特殊なカメラでキャッチして、放射性薬剤の分布を撮影します。このように、体内に放射性同位元素があってそこから出てくる放射線を浴びることを「内部被ばく」と言います。核医学検査では、放射性薬剤の投与後は、放射能が減衰と体外への排泄によって無くなるまで放射線を浴び続けることになります。被ばく線量は、放射性薬剤の種類と放射能の量(ベクレル数)および身体の大きさ(体重)によって決まり、撮影の回数や部位にはほとんど依存しません。(注3)

内部被ばくはミルド法(本シリーズ次回参照)によって計算され、線量が十分低くかつ十分鮮明な画像が得られるように、投与する放射能の量が決められています。結果として、病院で行われている他の放射線検査と同程度かそれ以下のレベルになります。もちろん検査によって放射線障害が起こるような線量ではありません。そもそも患者は病気を診断し治療方針を決めるために検査を受けるので、検査によって被ばくを上回る利益があるといえます。

放射性薬剤投与後の患者からは放射線が出るため、近くにいる人にも多少被ばくがあります。また、患者から排泄された尿などにも放射性物質が含まれることが多く、そこからも放射線が出るため、排泄物を扱う人も多少被ばくします。これらの二次的な被ばくはほとんどの場合ごくわずかな線量なので、問題になりません(注4)。なお、投与前の放射性薬剤や、投与後の患者の身体や排泄物から出る放射線を浴びるのは、外部被ばくです。外部被ばくを減らすための原則は「時間」「距離」「しゃへい」です。とくに距離は2乗で効くため大きく、2倍の距離をとれば4分の1に、半分の距離に近づけば4倍になります。

(注1)漢字で書くと「被曝」。「曝」はさらすという意味です。文献等で誤って「被爆」と書かれていることがありますが、「被爆」は原子爆弾に被災するという意味で、全く別の言葉なので注意してください。

(注2)X線検査での被ばく線量は、照射(撮影)部位と方向、X線のエネルギー、および電流と照射時間によって決まります。

(注3)PET検査では、吸収補正用の撮影として、体外から放射線をあててどれだけ身体で吸収されるかを測定することが多いです。その場合は、吸収補正用の撮影のたびに、多少の外部被ばくが加わります。

(注4)検査後の患者から出る放射線が問題となりうるのは、ひとつは検査後の患者が長時間乳幼児を抱くような場合で、「距離」が効いてくるので、何時間も密着して抱いていると子供の外部被ばく線量が高くなります。(また放射能が母乳に排泄され乳児がそれを飲むなら内部被ばくも加わります。)しかし、通常子供をあやす程度の時間であれば問題ありません。なお、家族は1回きりですが、病院の職員で多くの核医学検査を実施したり検査後の患者を世話する場合には、職業としての被ばくに気をつける必要があります。もうひとつは、外来で核医学検査を受けた患者が放射線を扱う職場に戻る場合で、自分の身体から出る放射線によって機器類が誤作動することがあります。

2008.11.4更新

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