近年、多施設共通のプロトコールに基づいて前向き(prospective)に患者を追跡することによって診断方法や治療方法の有効性を実証する臨床研究がさかんに行われるようになった。これらにはINSPIRE(*1)(*2)とかBRAVE-2(*3)などのコードネームがつけられ、結果が論文に発表されて本研究会で取り上げる機会も増えた。通常この種の研究では、専門家による委員会で詳細なプロトコールを作成し、それにもとづいて対象被験者を厳密に選択し、定められたとおりに検査と治療を行い、定められた方法で効果や予後が評価される。データの管理も研究機関から独立したデータセンターで行われる。新薬の治験では以前からこれに似た厳密な臨床試験が行われてきたが、近年は医師が行う臨床研究もこのような形をとるものが多くなってきた。その背景には、EBM(evidence-based medicine)意識の高まりによってエビデンスレベルの高い臨床データが求められるようになったことがあり、実際このような多施設前向き研究は一般に客観性、普遍性、信頼性が高いとされている。
核医学はデータの機種・測定方法依存性が強いという特徴があり、このような多施設研究に乗せるには注意が必要である。また前向きといっても、核医学データの収集方法は事前に定めるが、解析は後解析になることもしばしばである。しかし、これら多施設前向き臨床研究において、核医学検査が対象被験者の決定や治療効果の評価に用いられるようになってきたのは、きわめて喜ばしいことで、核医学関係者として大いに誇りに思う。というのは、研究が成功して、核医学検査が治療方針の決定や予後予測、治療効果判定に真に有効であることが実証されれば、当該疾患の診療ガイドラインに組み入れられて必須の検査として実施されるようになるからである。
(*1)
孤立性肺結節を有する患者における肺癌の検査前確率を推定するための臨床モデル
A clinical model to estimate the pretest probability of lung cancer in patients with solitary pulmonary nodules
Chest 2007 Feb;131(2):383-8
MK. Gould, L. Ananth, PG. Barnett, Veterans Affairs SNAP Cooperative
Veterans Affairs Palo Alto Htlh Care Syst, USA
(*2)
高リスクだが安定した急性心筋梗塞生存者においてシンチグラフィにより検出された虚血の改善に関して、初期戦略としての集中的な薬物治療と冠血行再建術は同等である。
An initial strategy of intensive medical therapy is comparable to that of coronary revascularization for suppression of scintigraphic ischemia in high-risk but stable survivors of acute myocardial infarction
J Am Coll Cardiol 2006 Dec 19;48(12):2458-67
JJ. Mahmarian, HA. Dakik, NG. Filipchuk, LJ. Shaw, SS. Iskander, TD. Ruddy, F. Keng, MJ. Henzlova, A. Allam, LA. Moye, CM. Pratt
Dept Cardiol, Methodist Hosp, USA
(*3)
発症後12時間以上経過した急性心筋梗塞患者における機械的再灌流療法の心筋救済能力
Ability of mechanical reperfusion to salvage myocardium in patients with acute myocardial infarction presenting beyond 12 hours after onset of symptoms
Am Heart J 2006 Dec;152(6):1133-9
G. Parodi, G. Ndrepepa, A. Kastrati, A. Conti, J. Mehilli, R. Sciagra, M. Schwaiger, D. Antoniucci, A. Schomig
Div Cardiol, Careggi Hosp, Italy