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 第25回:足の踏み場は?(2)

ラテン語の足(pes)とシラミ(pedis)の関係については調べがつきませんでしたが、関係があるかもしれないし、ないかもしれません。

いずれにしても、ラテン語の pes がなぜ ped- という言葉をつくるのかというと、ラテン語では名詞から他の品詞をつくる時に、格変化の語幹を使うからです。pes の対格(英語でいう目的格)は pedem(「足を」)、属格(英語の所有格)は pedis(「足の」)というように、格変化するときに「ped-」という語幹が現れるのです。これが、派生語をつくるときの基になるのです。こうして、pedal(ペダル)、pedestrian(歩行者)といった言葉ができました。お馴染みのペディキュアも pedi(足の)+cura(治療)、ついでにマニキュアは mani(手の、ラテン語manusに由来)+ curaというわけです。

少し脱線しますが、ギリシャ神話に登場する英雄オイディプス(英 Oedipus)の名前をお聞きになったことがあるでしょう。精神分析を創始したフロイトの「エディプス・コンプレックス」というのは、神託によって実の父親を殺して王となり、実の母親を妃としたオイディプスの物語からとられたこともご存知かもしれません。ギリシャ語もラテン語と同様、母音の長短が決まっているので、正確にはオイディプース(Oidipous)というのですが、これは本来「腫れた足」という意味です。後半の pous(プース)と言うのが、ギリシャ語で「足」を意味する言葉で、前半は「腫れる」という意味の動詞 oidein(オイデイン)にからきています。この oidein に由来する名詞 oidema(オイデーマ)から、英語の edema(oedema)が生まれたことは、炯眼な読者なら気づかれたかもしれません。edema は主に医学用語として、「浮腫」「水腫」という意味で使われていますね。

 

参考文献:
『新英和大辞典』(研究社)

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古代ギリシャのメダルに刻まれた、スフィンクスと「なぞなぞ対決」をするオイディプス。(バチカン美術館所蔵)