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ASCA

 第24回:足の踏み場は?(1)

前回、ラテン語の「体」と「頭」の使い方(?)について書きました。

同様に「体」と「頭」を使ってシラミの種類が分類されます:

  • pediculus (humanus) corporis(英human body louse)=コロモジラミ
  • pediculus (humanus) capitis(英human head louse)=アタマジラミ

英語名と対応させるとお分かりかと思いますが、humanus(フーマーヌス)というのは「人間の」という意味の形容詞です。実はややこしいのですが、正式な学名ではアタマジラミのことを pediculus humanus humanus と言うようで(理由はわかりませんが)、ご丁寧に humanus という形容詞を二回重ねています。分類としては、ヒトジラミを pediculus humanus といい、その下にコロモジラミとアタマジラミが入れられます。

シラミの話はこの辺にしたいのですが、このシラミを意味するラテン語 pediculus(ペーディクルス)には、どこかで見覚えがあるような気がしませんか。そうです、椎骨の一部、椎弓根のことを英語で pedicle (of vertebral arch) といい、ラテン語では pediculus arcus vertebrae となります。この pediculus というのは、ラテン語で足を意味する pes(ペース)に指小辞「-culus」を付けたもので、「小さい足」を意味するのです。ちなみに、peduncleという言葉も、pes に「-unclus」という指小辞がついたもので、同じく「小さい足」を意味します。大脳脚、小脳脚など、脳の他の部位と結びつける部分が「脚 peduncle」と呼ばれています。

ところで、シラミを意味する pediculus も「小さい足」から来ているのかと思ってしまうわけですが、じつはそこのところがはっきりわかりません。辞書を見ると、「小さい足」を意味する pediculus は「ペディクルス」と短母音なのに対して、シラミの pediculus は「ペーディクルス」と長母音になっています(ラテン語では母音の長短を区別します)。実はよく辞書を見ると、ラテン語には「シラミ」を意味する pedis(ペーディス)という言葉があるのです。だから、学名に使われている pediculus というのは「小シラミ」というカワイイ名称ということになります。この pedis=シラミが pes=足に由来するのかどうは不明です。

 

参考文献:
『新英和大辞典』(研究社)
『骨単』『脳単』(河合良訓監修、NTS)

 

vertebra.png

椎骨
椎体(Body)と椎弓板(Lamina)を結ぶ二本の細長い部分が椎弓根(Pedicle)です。(出典:Wikipedia)