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語源でゴキゲン

語源でナニかがわかる?

この連載では、医療に関連する言葉を中心に「語源」に焦点を当てています。普段何気なく使っている言葉にも、背後には深い意味がある、そんな話題を提供します。<

 第31回 ラテン語のはなし (2)

前回は、ラテン語の名詞について、主格の単数形と複数形をみてみました。しかし、解剖学用語(それに生物の学名)などを理解するためにもう一つ重要なのは属格の変化です。属格というのは「~の」という意味を表す格で、英語でいえば所有格にあたり、〈's〉を使ったり、前置詞〈of〉を使うこともできますね。ラテン語にも〈de〉という前置詞もあるのですが、「~の」というときは基本的には属格を使います。ただし、そんなにいちいち変化させないといけないのかとげんなりするかもしれませんが、実は属格については、たまたまですが、前回紹介した男性名詞と女性名詞については、主格複数の形と同じです。また、中性名詞の場合は、男性名詞と同じ〈-i〉という語尾になります(下の表参照)。

実際の例を見てみましょう。たとえば、胸骨膜は英語で sternal membrane ですが、ラテン語では membrana sterni といいます。Membrana は「膜」の意味の女性名詞、sterni は「胸」(解剖学用語では「胸骨」)を意味する sternum という中性名詞(解剖学用語では「胸骨」)の属格で、membrana sterni は「胸骨の膜」ということになります。女性名詞の属格については、医学用語ではありませんが皆さんご存知のいい例があります。一昨年(2012年)に映画がヒットして、ちょうど第二弾が公開される漫画『テルマエ・ロマエ』のタイトルです。これをラテン語で書くと thermae Romae となります(実は Roma の〈o〉は長母音なので、読みは「テルマエ・ローマエ」が正しいのですが)。〈-ae〉というのは女性名詞の複数主格か単数属格でしたね。thermae というのは、英語にもなっていますが(英和辞典にも載っています)「公衆浴場」という意味で、ラテン語としては女性名詞の複数主格の形です。Romae のほうは、Roma、つまり「永遠の都」ローマは女性名詞なのですが、その属格なのです。かくして「テルマエ・ロマエ」は「ローマの公衆浴場」という意味になるわけです。

主格単数 主格複数 属格単数
男性名詞 focus foci foci
女性名詞 vena venae venae
中性名詞 datum data dati

参考文献:
『新英和大辞典』(研究社)
呉茂一『ラテン語入門』岩波全書